【衛生管理】濡れた手で「アルコール消毒」してはいけない
ウイルスを撃退する「手洗い9ステップ」
先日公開した『トイレの「ハンドドライヤー」を使ってはいけない』に続き、「風邪を予防するための本当に正しい手洗い方法」についてお伝えします。
手を清潔に保つための「手指衛生」は、感染症予防の基本中の基本です。「接触感染」の多くは、人の手を介して起こるからです。
医療機関における感染対策も、手洗い・手指消毒を最も基本的な対策と考え、1つの処置ごとに1回手洗い・手指消毒をする考え方が、大変重視されています。
しかし、一般的には、風邪予防の観点から正しい手洗いの方法を知っている人は、以外に少ないものです。
1日に11回以上手洗いをする人は、風邪のリスクを50%以下にできることが、複数の研究で示されています。睡眠時間を除けば、1時間~1時間半に1回、手を洗うくらいの頻度です。
たとえ潔癖症だと言われても、大切なプレゼン前、受験前や結婚式前など、絶対に風邪をひけないという人は、しつこく手洗いをすることが、風邪予防に直結します。
また、手洗いの前提として、爪は常に短く切っておきたいところです。爪の間には雑菌が入りやすく、かつ洗いにくいため、手洗いの効果が十分に発揮されない可能性があるからです。
ウイルスを寄せ付けない手洗いの方法は、次の9ステップが基本です。
1.手を水でぬらして石けんをつける
2.手の平を洗う
3.手の甲を洗う
4.指と指の間を洗う
5.指先、爪の間を洗う
6.親指を手の平でねじるように洗う
7.手首を洗う
8.流水ですすぐ
9.ペーパータオルでしっかり拭く
手順は、「ひっこしはおやのくび」(平・甲・指・親指・手首)と覚えておきましょう。特に、指先や指の間、親指は洗い残しが起きやすいので、意識して洗いましょう。
濡れた手で「アルコール消毒」してはいけない
医療機関のほか、飲食店やショッピングモールなどの商業施設では、手指消毒用のアルコール製剤が設置されているケースが増えました。
しかし、手指消毒用のアルコール製剤は、正しく使用しないと効果が期待できないということは、あまり知られていないようです。
アルコール自体にも、インフルエンザウイルスなどに対する抗菌作用があるのですが、アルコールが揮発するときの脱水作用を利用した殺菌効果が期待されています。
つまり、手が濡れたままの状態で手指消毒用のアルコール製剤を使ってしまうと、アルコール濃度が薄まり、殺菌効果が下がるのです。
ですから、前述の方法でしっかりと手を洗ったら、できる限りペーパータオルでしっかりと手の水分を拭き取ってから手指消毒用のアルコール製剤を使用してください。
アルコール消毒の仕方は、手洗いの仕方と同じです。爪の間も忘れずに、まんべんなく手に揉み込んでください。
そして、手を振るなどして、しっかり乾かすことによって、手指消毒用のアルコール製剤の効果は正しく発揮されます。
『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』
著者からのメッセージ
はじめまして。裴英洙と申します。
このたび、『一流の人はなぜ風邪をひかないのか? MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』という、一般の方々に向けた「風邪対策本」を出版します。
「風邪の治し方」は、正直、医者泣かせです。 最先端の医学でも明確な原因のメカニズムは解明されておらず、風邪には、根治療法や特効薬がいまだに存在しません。 どんな名医でも、風邪を予防・根治する100%完璧な方法を知らないのです。
そこで本書では、現代医学で解明されている最大限の医学的知見や科学的知識を、一般の人が日常的に実践できるレベルの具体策に落とし込んで紹介します。現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と、医療統計データ、150近くの最新の研究論文や文献を総動員し、「風邪をひかないための予防策」と「できる限り早く風邪を治す方法」を紹介していきます。
人間は、ほうっておくと一生のうちに平均200回風邪をひき、生涯で丸1年間以上も風邪で寝込んでいると言われます。「風邪をひかないこと」は、究極のコスト削減・生産性向上に直結するのです。
また、風邪は、あらゆる人を苦しめるのに、「経験」や「感覚」で対処しがちな病気です。医学的根拠を元にした対策を網羅した本書を「現代人の新常識」として、風邪をひかない健康的な生活を送るために、是非とも、本書を使い倒してください。