【がん治療】麻疹ウイルスでがん退治 東大 治療法開発
人工的に改変した麻疹(はしか)ウイルスを使ったがんの治療法を東京大医科学研究所の甲斐知恵子教授らのグループが開発、マウスで効果を確認した。25日、大阪市で開かれるがんの国際会議で発表する。
感染すると細胞を殺すウイルスの性質を利用し、ウイルスにがん細胞を攻撃させる「腫瘍(しゅよう)溶解性ウイルス療法」が注目を集めている。遺伝子改変技術の進歩でがん細胞だけに感染するウイルスを人工的に作ることが可能になったからだ。たまたま麻疹にかかったがん患者のがんが小さくなったという報告もある。
甲斐さんらは、正常な細胞と乳がん細胞では麻疹ウイルスが感染する経路が違うことを見つけた。乳がん細胞では、正常な細胞でほとんどみられないネクチン4というたんぱく質にくっついて感染する。そこで、正常な細胞への感染経路をふさぐように遺伝子操作したウイルスを作り、ヒトの乳がん細胞を移植したマウスに投与したところ、がん細胞の増殖を抑える効果を確認。健康なサルに感染させても麻疹にならず、ウイルスの排出もなかった。