2018/04/12【インフルエンザ】インフルエンザの新薬承認、ほか2製品に効能・効果を追加
【インフルエンザ】インフルエンザの新薬承認、ほか2製品に効能・効果を追加
2月23日に、厚生労働省が新薬1製品を新たに承認し、ほか2製品に新たな効能・効果を追加することを承認しました。ゾフルーザ、オレンシア、サーティカンの特徴などを紹介します。
ゾフルーザとは?
バロキサビルマルボキシル(商品名ゾフルーザ)は、「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」を効能・効果として承認されました。3月14日には薬価基準収載および発売され使用可能となっています。
用法・用量は年齢や体重によって違いますが、どの場合も1回だけ飲むこととされています。ほかにインフルエンザに対して使われる飲み薬としてオセルタミビル(商品名タミフル®など)がありますが、オセルタミビルは多くの場合、1日2回・5日間飲みます。
臨床試験で、バロキサビルマルボキシル、偽薬、オセルタミビルを比較して、有効性などが検証されました。
12歳以上のインフルエンザ患者が対象とされました。対象者はランダムに、いずれかの薬(または偽薬)を飲むグループに分けられました。効果判定には、薬(または偽薬)を飲んでから咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさ・悪寒、筋肉・関節の痛み、疲労感の症状がいずれも「なし」または「軽度」になるまでの時間(ただし、その状態が21.5時間以上続いた場合のみ)を基準としました。
基準の改善が得られるまでの時間は、バロキサビルマルボキシルを飲んだあと半数の人で53.7時間以内、偽薬を飲んだあと半数の人で80.2時間以内となり、バロキサビルマルボキシルを飲んだグループのほうが改善が早くなりました。
バロキサビルマルボキシルとオセルタミビルの比較では、統計的に差を確認できませんでした。
何らかの副作用が現れた人は5.4%で、主な副作用は下痢などでした。
ほかに、12歳未満のインフルエンザ患者を対象にした臨床試験も行われました。
この試験は、対象者全員がバロキサビルマルボキシルを飲むこととしました。用量は体重によって変えました。咳と鼻づまりが「なし」または「軽度」、かつ体温が37.5℃未満になるまで(ただし、その状態が21.5時間以上続いた場合のみ)を評価しました。
基準の改善が得られるまでの時間は、体重10kg以上20kg未満の子供のうち半数が39.1時間以内、20kg以上40kg未満の子供で半数が45.6時間以内、40kg以上の子供で半数が60.9時間以内でした。
何らかの副作用が現れた子供は3.8%で、主な副作用は下痢などでした。
オレンシアとは?
アバタセプト(商品名オレンシア®)は、従来関節リウマチの治療に使われている、生物学的製剤と呼ばれる種類の薬です。新たに効能・効果として、既存治療で効果不十分な「多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」が追加されました。
若年性特発性関節炎は、16歳未満で発症し、関節の痛みや腫れなどを特徴とする病気です。発熱など全身の症状を伴うタイプもありますが、オレンシア®は使用上の注意に「若年性特発性関節炎のうち全身型若年性特発性関節炎については,全身症状に対する有効性及び安全性は確立していないので,全身症状が安定し,多関節炎が主症状の場合に投与すること。」と記載されています。
既存治療として、エタネルセプト、アダリムマブなどの薬もありますが、アバタセプトはほかの薬で効果不十分だった場合などに使われます。
臨床試験では、まず16週の導入期に対象者全員がアバタセプトを使用し、一定基準以上の改善があった人が、アバタセプトを引き続き使うグループと、偽薬に変えるグループに分けられました。治療後に関節の症状が悪化する「再燃」までの期間が比較されました。
6か月後までに再燃があった人の割合は、アバタセプトのグループで20%、偽薬のグループで53%であり、アバタセプトのグループのほうが再燃までの期間が長くなりました。
副作用について、導入期に何らかの副作用が現れた人は27.4%でした。主な副作用は、頭痛、ふわふわするめまいなどでした。
なお、アバタセプト製剤には点滴の製品(オレンシア点滴静注用250mg)のほか皮下注射する製品(オレンシア皮下注125mgシリンジ1mL/ オレンシア皮下注125mgオートインジェクター1mL)もありますが、効能・効果の追加があったのは点滴の製品のみです。
サーティカンとは?
エベロリムスは、商品名アフィニトール®としてがん治療に使われているほか、免疫抑制薬としても使われている薬剤です。サーティカン®は免疫抑制薬としてのエベロリムス製剤です。臓器移植における拒絶反応の抑制を目的に使われています。その対象となる臓器移植として、従来の心移植、腎移植のほか、新たに肝移植も効能・効果に追加されました。
肝移植で使う場合、通常は免疫抑制薬のタクロリムスをエベロリムスと一緒に使うこととされています。タクロリムスは臓器移植後に使われることも多い免疫抑制薬ですが、臓器移植後の免疫抑制薬は一生続ける必要があり、タクロリムスを長期間使い続けることで腎障害などの副作用が現れやすくなることも懸念されるため、定期的に血中濃度を測定するなどしてタクロリムスが多すぎないよう注意して使われます。エベロリムスを併用することでタクロリムスを減量することができます。
生体肝移植患者が対象となった臨床試験では、タクロリムスを通常量で使ったグループと、タクロリムスを減量してエベロリムスと併用したグループが比較されました。
タクロリムス通常量のグループでは、急性拒絶反応などにより免疫抑制薬の効果不十分とされた人が142人中8人でした。エベロリムスを併用したグループでは142人中7人でした。統計的にエベロリムス併用がタクロリムス通常量に劣らないと判定されました。
副作用について、12か月の集計で何らかの副作用が見つかった人は57.0%でした。主な副作用は白血球減少症などでした。
まとめ
新たに承認された薬剤1製品と、効能・効果などが追加された薬剤2製品を紹介しました。承認が広がることで、保険診療として使える治療が増えます。
効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、治療選択の幅を広げることができます。