【カンピロバクター】鶏肉とカンピロバクター食中毒の深い関係
増える鶏肉料理の食中毒
鶏肉とカンピロバクター食中毒の深い関係
食中毒の季節がはじまりました。梅雨から夏へと向かう蒸し暑い日々には、食中毒の原因となる菌も増えやすくなります。
その中でも、みなさんの身近なところで最も増えているのが、鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒です。昨年は、東京と福岡で開催されたB級グルメの「肉フェス」において、同じ店舗で提供された鶏肉のにぎり 寿司ずし が原因で、約150人の食中毒が発生して話題になりました。また、最近でも鶏刺しによる集団食中毒がニュースになっています。
子ども・高齢者は脱水で重症化も
カンピロバクター食中毒では、原因となるものを食べてから約2~5日で、下痢、おう吐、腹痛、発熱などの症状を起こします。また、下痢に血や粘液が混じることもあります。
一般的には、食中毒の症状が出ても、その多くは自然に回復します。しかし、たかが食中毒と、あなどってはいけません。ひどい下痢とおう吐は、本当につらい症状です。特に小さい子どもや高齢者では、脱水で重症になることもあります。また、まれに手足の 麻痺まひ を起こしたり、呼吸ができなくなったりする、「ギランバレー症候群」という合併症を起こしてしまうこともあるのです。
市販品の20~50%以上に汚染
カンピロバクター菌は、野鳥、ニワトリ、ウシ、ブタ、そしてペットの犬や猫など、多くの動物が体の中に持っています。したがって、加工の段階で汚染された肉、未殺菌の乳や卵などを食べることで感染してしまいます。また、飼っているペットが保有している菌で感染してしまうこともあります。さらに、野鳥や動物の 糞ふん で汚染された井戸水や湧き水が原因となることもあり、本年5月に新潟県の山中で湧き水を飲んだ小学生ら43人が、カンピロバクターによる集団食中毒を発症した事例も報告されています。
そして、このような様々な原因の中でも、特に多いのが鶏肉による食中毒なのです。これまで行われている多くの調査では、一般に市販されている鶏肉の約20~50%以上がカンピロバクター菌に汚染されていたという、驚くべき結果が示されています。鶏の生肉は、その多くが汚染されているのが前提だと考えてください。
焼き残しに注意 冷蔵庫の過信は危険
カンピロバクター菌は、基本的に肉の表面についているので、しっかりと表面が加熱されれば死滅します。しかし、ミンチとなっている肉団子などは、表面が中に練り込まれた状態なので、「つくね」や「肉団子」は中心までしっかりと火がとおっていなくてはなりません。
焼き鳥は、焼きたてを食べるのが基本です。複数の肉を串に刺した場合には、肉と肉の間に焼き残しがあったりします。それでも、お店で焼いたばかりの時には、熱で菌の数も減っています。一方、デパ地下で買った焼き鳥は、時間の経過とともに菌が増えてしまうので、そのまま食べずに電子レンジでしっかり加熱しましょう。
冷蔵庫も過信してはいけません。カンピロバクターは、低温にも比較的強い菌です。低温の中で菌の増殖はおさえられますが、菌が死んでしまうわけではありません。したがって、冷蔵庫から出して時間が経過すれば菌は増えていきます。そして、温度や湿度が高くなる梅雨や夏には、菌の数が短時間で増えてしまうため、さらに注意が必要となります。
食事を作る人は、手洗いをしっかり行い、包丁・まな板の扱いにも気をつけましょう。また、カンピロバクター菌は乾燥には弱いので、調理する器具などを、しっかりと乾燥させることも効果があります。