【プール熱(咽頭結膜熱)】プール熱って?大流行の兆し
「プール熱」ってご存じですか?「プールで体が冷えてかかるかぜ」ではありません。ウイルス性の感染症で、夏場に幼い子どもがかかりやすい感染力の強い病気なんです。大人がかかることもあり、ことしは、ここ10年で最も流行する兆しも出ています。
プール熱とはどんな病気なのか?かからないためにはどうすればいいのか?詳しく解説します。(ネットワーク報道部・戸田有紀記者、清有美子記者、岡田真理紗記者)
プール熱とは
プール熱は正式には「咽頭結膜熱」といいます。「アデノウイルス」というウイルスによって引き起こされる感染症で、このうち、目が真っ赤に充血したり、目やにが出たりするなど結膜炎の症状が出るものを指します。
そのほかの症状に38度から40度の発熱、扁桃腺の腫れやのどの痛みなどがあり、これらが1週間程度続くとされます。
夏場に流行することやかつてプールの水の消毒が不十分で流行することがあったことからプール熱と呼ばれるようになりました。
現在は塩素濃度の管理の徹底などで、プールでの感染がほとんどなくなり、その反面、せきやくしゃみなどの飛まつやウイルスが付いたタオルを使うことなど日常生活での感染が多くなっているということです。
平成12年ごろからは医療機関で簡単に検査ができるようになり、のどの奥の粘膜をこすり取っておよそ10分程度で陽性かどうかが分かります。
プール熱は感染力が強いため国立感染症研究所は、発熱や結膜炎の症状が出て「かかったかな」と思ったら感染を広げないためにも早めに医師の診察を受けるよう薦めています。
ことし大流行の兆し
プール熱の感染のピークは例年、7月から8月にかけてですが国立感染症研究所によりますと、ことしは全国的に発症の報告が相次ぎ、先月28日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数が、前の週から820人増えて2867人となっています。
これを基にした1医療機関あたりの患者数は0.91人となり、ここ10年で最も流行する兆しが出ているということです。
また、患者全体のおよそ6割を5歳以下の子どもが占めていて幼い子どもがかかりやすいともいえます。
仕事に行けない!親の悲鳴
インターネット上には保育所や幼稚園などに通う子どもがプール熱にかかって悲鳴をあげる親からの投稿が相次いでいます。
「子どもの目の赤みが気になって眼科に行ったらプール熱。完治に早くて3日、長いと2週間かかると…仕事に行けなくて今月の給料が恐ろしくて熱出そう」
「娘が体調崩して1週間たってやっと落ち着いてきたなと思ったら息子が発熱して、まさかのプール熱で地獄」
プール熱はインフルエンザなどと同じ文部科学省が指定する学校感染症の1つで、発熱や結膜炎の症状が消えた翌日から2日を経過するまでは、出席停止とされています(小児科の医師が認めればそれ以前でも登校可能)
このため、子どもがかかると看病する親が仕事に行けない期間が長くなってしまうためやっかいなのです。
まれに重症化も
プール熱にかかったらどうやって治すのか。国立成育医療研究センター総合診療部救急診療科の植松悟子医長によると、プール熱の治療に特効薬などはないということです。
ほとんどの場合、自然に治りますが、免疫力が低下しているとまれに重症化することもあるということです。
また、十分に水分がとれず脱水症状を併発することもあるといい注意が必要です。
どう防ぐ?
では、どうやって感染を防げばいいのか。植松医師は3つのポイントを挙げています。
(1)患者との接触を避ける。(2)マスクをしてうがいや手洗いをしっかり行う。(3)タオルなどの使い回しをやめ、ドアノブなど人の手が触れるものを積極的に消毒することです。
消毒について気をつけるべきは、最近はやりのアルコール消毒では効果がないということです。
手を洗う際はアルコール消毒ではなく、石けんをつけて10秒から15秒、しっかり洗う必要があります。
ドアノブなども同様で、塩素系の漂白剤を含む水で濡らした布でこまめに拭く必要があります。
プール熱の原因となるウイルスは、いったん机やドアノブに付くと10日間程度生き続けることができ、感染した人の唾液や目やになどには、ウイルスが10日ほど潜伏し続けるそうです。
このため症状が治まっても、ほかの人にうつさないようしばらくの間マスクをしたり手洗いなどに気をつけたりする必要があるということです。
昔から「夏の病気はやっかい」といわれます。植松医師は「感染したら子どもでも大人でも無理に集団生活に入らず水分を十分にとって休息すること。症状を悪化させないためにも周囲にうつさないためにも大切です」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20170616/k10011019791000.html