【妊娠中の対策】妊娠中の感染症 流産や胎児に障害のおそれ
人気女優のSNS投稿をきっかけに、妊娠中に気をつけるべき感染症が改めてクローズアップされている。妊娠中は免疫力が低下して感染症にかかりやすく、重症化すると、流産や死産、赤ちゃんに障害が出る可能性が高くなることもある。自身と生まれてくる赤ちゃんのために、感染症予防の正しい知識を身につけ出産に備えよう。
女優の佐々木希さん(30)が先月半ば、友人とローストビーフのお皿を前にした写真を写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿したところ、ファンから「妊娠中はローストビーフはダメ!」などのコメントが相次いだ。佐々木さんはこのとき妊娠4~5カ月。ファンが心配したのは、妊娠中に加熱不十分な可能性のある肉を食べることでトキソプラズマやリステリアなどに感染する恐れがあるためだ。
トキソプラズマは、家畜の肉や感染したばかりの猫のふん、土の中などにいる原虫(寄生虫)。健康な大人が感染しても問題ないが、妊婦が初めて感染した場合は流産や死産、赤ちゃんに脳や目の障害などが生じることがある。
リステリアは、河川や家畜の腸管など自然界に広く分布する細菌。健康な大人は感染しても大事に至ることはないが、妊娠中の母子感染で、流産や死産、生まれた赤ちゃんの髄膜炎や敗血症などの原因となることがある。
どちらも、生肉や加熱不十分な肉、殺菌されていない牛乳で作られたナチュラルチーズなどの乳製品を食べたり、土いじりしたりすることで感染する可能性がある。中心部の加熱が不十分な場合があるローストビーフも感染リスクがある食品の一つだ。
1回でもNG
佐々木さんのインスタグラムには、「私は食べたけど大丈夫だった」「妊婦にはストレスが大敵! 好きに食べるべきだ」「たくさん食べなければ大丈夫」などのコメントもあった。しかし、母子感染の患者団体「トーチの会」代表の渡辺智美さんは「汚染された食品を1回口にしただけで感染することもあり得る」と指摘。「子供の一生にかかわる障害を生み出す可能性もある。他のリスクと同列に扱うことはできない怖い感染症だけに、妊婦さんや周囲の人は無責任な言葉に惑わされないでほしい」と訴える。
これらの感染症を予防するには、生肉や加熱不十分な肉は食べない▽肉は中心部までしっかり火を通す▽未殺菌の牛乳・乳製品を避ける▽包丁やまな板は生肉と野菜用に分ける▽土いじりは手袋やマスクを装着し作業後は十分な手洗い-などの対策が有効だ。
妊娠前にワクチン
国内でも感染拡大が心配される麻疹(はしか)は、妊娠中の感染で重症化が心配される感染症だ。流産や死産、早産の頻度が上がるとの報告があるほか、胎児の発育や羊水量の異常などとなる恐れがあるとされる。
また、「三日ばしか」と呼ばれる風疹は、妊娠初期の女性がかかると、難聴や白内障、心臓病、精神運動発達遅滞などを持った先天性風疹症候群の子供が生まれることがある。
麻疹と風疹を予防するMRワクチンは、妊娠中には接種できない。妊娠を計画している女性は、これらの感染症に子供のころにかかったか、もしくはワクチン接種したかを確認し、どちらでもない場合は早めのワクチン接種が勧められる。
日本産婦人科医会は、すでに妊娠中の女性に対して、はしかの感染者が多く発生している地域への旅行などは控えるよう呼びかける。感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「免疫のない妊婦さんは出産後、周辺の流行に関係なく、なるべく早くMRワクチンを受けてほしい」と話している。
https://www.sankei.com/li…/news/180528/lif1805280008-n1.html