浙江省杭州に住むジュー・ジョン-ファさん(Zhu Zhong-fa、43)は、頭痛やけいれん発作が1か月ほど続いたことから浙江大学附属第一医院に駆け込んだ。検査の結果、ジューさんの脳や肺、胸腔内の筋肉などに700以上もの寄生虫(サナダムシの一種)が発見された。
感染科副主任の黄建?医師は「ローストポークや羊など、私たちは常に肉料理を口にしています。ジューさんは火鍋をした時に豚肉を食べたようですが、加熱処理が不十分だったと話しています。いずれにしても有鉤嚢虫が豚の筋肉内などに寄生したものを十分加熱せずに摂取したことや、感染した家族の便に虫卵が含まれていたなどの衛生上の問題が感染源としてあげられます。ジューさんの場合、幼虫が身体中を移動して中枢神経系に侵入(神経嚢虫症)、臓器にも感染症の影響がみられるなど深刻な状況でした」と述べている。
サナダムシは消化管内で成虫になると卵を大量に産み、卵が孵って幼虫となり、全身に広がって嚢虫へと発育する。大きな成虫は6メートルを超えることもあるようで、脳がシスト(嚢胞)に冒されると、痙攣、意識喪失、失明、脳水腫を起こし死に至ることもある。脳に寄生した場合は早期に治療を開始することが必要であるため、ジューさんはギリギリのタイミングだったと言えるだろう。
なおこの感染症の予防は、衛生管理の徹底、流行地での生水や生野菜の飲食を避けること、豚肉の十分な加熱、またはマイナス24度で1日冷凍することなどで可能なようだ。
ちなみに今年4月には、加熱不十分の豚肉を食べたとみられるインドの18歳の少年が、脳に嚢虫が寄生する「神経嚢虫症」により死亡している。