病院は、患者や医療従事者を感染から守るために、手指や医療機器の消毒、医療設備の清掃を徹底して行っている。しかしカナダ・University of ManitobaのKevin Shek氏らは、患者のプライバシーを保護するための間仕切りカーテン(プライバシーカーテン)は感染対策が見落とされがちだとして、Am J Infect Control(2018; 46: 1019-1021)で注意を喚起した。
清掃予算の削減による影響か
病棟患者のベッドを取り囲むプライバシーカーテンは、次のような理由から汚染のリスクが高いとされている。①頻繁に触れられる②クリーニングまたは交換の頻度が低い③プライバシーカーテンに触れる前後に手指を消毒する頻度が低い―など。以前Shek氏らが行った研究によると、プライバシーカーテンの細菌汚染は平均13.3CFU/cm2であった。またプライバシーカーテンの31%で、抗菌薬(抗生物質)が効きにくくなるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が繁殖していた。その理由として、カナダ全土で清掃予算が削減方向にあることが挙げられるという。
そこで同氏らは、カーテンクリーニングまたは交換の適切なタイミングを明らかにするため、マニトバ州のHealth Sciences Center熱傷・形成ユニットにおいて、クリーニングされた10枚のプライバシーカーテン(生地は綿・ポリエステル混紡)を追跡し、細菌汚染率を調べた。
対照群ではMRSAは検出されず
対象となったプライバシーカーテンのうち、8枚はベッドの周囲をプライバシーカーテンで仕切る部屋に配置され、ベッドから約30cmの間隔を空けてつり下げられた(試験群)。また2枚は対照群として、患者などが直接触れられない場所につり下げられた。細菌検査は、各カーテンの2カ所に検査キットを30秒間押し付けて菌を測定する方法で、初日、3日目、7日目、10日目、14日目、17日目、21日目に行った。
初日に細菌が検出されたカーテンの平均細菌数は、試験群が0.20 CFU/cm2、対照群が0.10 CFU/cm2といずれも最小であったが、21日目にはそれぞれ約26倍、3倍に増加した。
さらに調査を開始したときは検出されなかったMRSAが、試験群で10日目に1件が陽性と判定され、14日目には5件(62.5%)に増加、21日目には7件(85%)に増えた。一方、対照群ではMRSAは検出されなかった。
10~14日でMRSA陽性が増加
以上の結果から、Shek氏らは「病室のプライバシーカーテンがつり下げてから10~14日の間にMRSA陽性に転じたことを踏まえると、このタイミングでカーテンを清掃する、または新しいものと交換することが適切と考えられる」としている。
これはカナダで行われた1つの研究結果であるため、日本を含む全ての病院に当てはまるものではない。しかし同氏らが指摘するように、プライバシーカーテンは頻繁に触れられることが多く、接触する度に手指を消毒することは少ない。自分または身近な人が入院した場合は、プライバシーカーテンをべたべた触って病原菌を持ち込んだり、感染を拡大させたりしないことが重要といえるだろう。手指の消毒はしっかり行いたい。