新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店への営業時間短縮要請のあおりで、飲食店に食料品や物品などを納入する業者にも深刻な影響が出ている。政府はこうした業者に最大40万円の一時金を給付する方針だが、1日6万円とする飲食店への時短協力金と比べ、「すずめの涙」との指摘も。「苦境は飲食店だけではない」「大手以外は生き残れない」。各方面で長いトンネルが続きそうだ。(小川原咲、西山瑞穂)
「売り上げは例年の3割程度しかない。この業界に55年いるが、本当に危機的な状況だ」。大阪府東大阪市のレンタルおしぼり業者「ら・しーく」の松本龍男会長(75)はため息をつく。
府内のホテルや飲食店などと約400件の取引がある同社。だが緊急事態宣言の再発令を受け、多くの取引先が時短営業に応じたり、休業を決めたりした。それに伴い、おしぼりの発注が停止。作業場内には在庫が積み上がったままだ。松本会長は「廃業に追い込まれた同業者もいる。飲食店だけでなく、われわれのような業者もしんどい思いをしている」と訴える。
政府は、宣言が出されるなどした地域の飲食店と取引のある業者や農家・漁業者などに一時金の給付を検討している。梶山弘志経済産業相は記者会見で、「厳しい状況にある事業者については、政府として支援を行う」と言及。現在、具体的な制度設計を進めているが、中小企業庁によると、申請開始は早くても3月ごろになる見込みだ。
だが、支援そのものに対して「不平等」との声もある。飲食店の場合、午後8時までの時短要請に応じれば、1日で6万円の協力金が支払われる。これに対し、納入業者側への支援は中小企業で最大40万円、個人事業主は最大20万円の一時金にとどまるためだ。
「業界の規模を考えると一時金は少ない。卸売業のことを知らずに決めているのではないか」。全国の飲食店に輸入肉などを販売する「堺商事」(堺市中区)の男性代表(37)は対応を疑問視する。
同社では宣言の再発令を機に、取引先からの発注が相次ぎストップ。昨春まで月に約2千万円あった売り上げが大幅に減少している。男性は「先が見えないのがきつい。このままでは大手以外は生き残れない」と肩を落とす。
同じく飲食店からの注文が大幅に減少したという、大阪市北区の酒店「伊吹屋」の小牟礼隆之店長(43)は「うちは家族経営なので、支援金はありがたい」。その一方、「従業員を雇っているような店にとっては『すずめの涙』ではないか」とも指摘する。「困っているのに給付の対象にならない事業者が出るのはおかしい。事業規模や雇用形態にあわせ、段階的に支援できないのか」と求めた。