2021/03/12【新型コロナウイルス:COVID-19】変異株の感染拡大警戒 東京都が簡易検査を強化 /東京都
新型コロナウイルスの新規感染者数の下げ止まりが顕著な東京都で、感染力が強いとされる変異株への警戒感が高まっている。変異株感染はスクリーニング検査(簡易検査)で判明した陽性も含めて20人を超え、12日の都のモニタリング会議では「変異株などにより急激に感染の再拡大が起こる可能性がある」との分析が示された。都は新規感染者の約10%の検査規模を確保したスクリーニングの体制強化を急ぐ。
都内の新規感染者数は12日まで3日連続で300人台。この状況に小池百合子知事は同会議で「思い起こすと、10、11月のころは200人台、300人台が続き、その後、ポーンと跳ねた」と述べ、感染防止対策の重要性を強調した。
同会議の分析によると、都外居住者の唾液の郵送検査による感染判明分を除外した新規感染者数の7日間平均は今月10日時点で前週に比べ10人減の約262人。昨年の第2波で十分に減少せず約150~200人で推移した後、第3波の感染再拡大につながったとしており、さらに変異株の存在で懸念を強める。
都は昨年12月、新型コロナ感染が判明した感染者の検体に対して、変異株のスクリーニング検査を開始し、陽性となった検体は国立感染症研究所(感染研)によるウイルスのゲノム(全遺伝情報)解析に回している。厚生労働省などによると、ウイルス量が少ない場合は確定にいたらないが、それでも変異株の疑いは強いとされる。
厚生労働省が今年2月、地域での変異株の広がりをつかむために各自治体に目安として示した検査の規模は陽性者の5~10%。都では当初、都の検査施設だけでの実施だったため検査規模は約5%だったが、2月から民間検査機関と連携して進めており、現在は約10%に拡大した。
検査件数は2700件を超え、今月11日までに12人の陽性を確認。今月だけで4人となっている。海外への渡航歴があるなどの理由からスクリーニング検査を経ずにゲノム解析が行われたケースもあり、都内の変異株感染は未確定分も含め20人を超えた。
政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は国内での感染状況について「早晩、変異株が主流になる」との見方を示しており、都は民間検査機関でのスクリーニング検査拡大などによる監視体制強化に向け調整を進めている。
また、都は感染再拡大に備え、コロナ患者を受け入れる医療機関の空床確保のため、転院調整の仕組み作りを進めてきた。第3波で症状が回復して国の定める退院基準を満たしていても、持病があったり、リハビリが必要だったりして入院が長期化したケースが多く生じ、病床逼迫(ひっぱく)の一因となったためだ。
都は退院基準を満たした患者の転院を受け入れる意向がある病院を「回復支援病院」としてリスト化を進め、2月にオンラインで照会できるシステムを導入した。回復支援病院は順次増え、現在は約200カ所に達した。都幹部は「コロナ患者受け入れと、回復支援という役割分担の形ができた。この仕組みを動かしながら、課題があれば改善していきたい」と話す。