【歯周病・虫歯】歯周病・虫歯に効果ナシ “歯磨き剤”使用の逆効果
実は、歯磨き剤には2種類ある。歯石の沈着や口臭などを防ぐための基本成分のみが入っている“化粧品”と、歯と歯茎の健康を保つための薬効成分が含まれている医薬部外品(薬用歯磨き剤)だ。
歯科医師業界の事情に詳しい、健康ジャーナリストの田口豊氏は言う。
「薬用歯磨き剤には、漢方や消炎剤、ビタミンやプラークを溶解する薬剤が入っているものがありますが、有効成分が吸収できるかどうかの疑問があったり、効果があってもその場限りとしか考えられないものがほとんどなのです」
そんな中、あえて効果を認めるとすれば、“フッ素入り”と“知覚過敏用”だという。
「フッ素入りは子供や歯ぐきが下がって象牙質が剥き出しになった箇所が虫歯になっている中高年には有効で、プラークの中での細菌の活動を抑制し、歯の質を強化して、再石灰化を促す働きがあります。一方、冷たい水などが歯にしみる知覚過敏用歯磨き剤は、刺激が通る象牙質の細管の入り口を塞ぎ、痛みを止める効果が得られる。ただし、いずれも根本的な治療にはなりません。あくまでも歯科医に行く前の処置として有効だということです」(同)
ところで、日本人の40歳以上の80%以上が歯周病を患っているとされる。歯の磨き方や歯磨き剤の選び方も大事だが、歯周病は歯肉の炎症や歯を支える歯槽骨を破壊するだけでなく、全身疾患の誘因にもなる。その怖さも知っておきたいところだ。
歯周病は、細菌感染によって起こる炎症性疾患の一つ。その慢性炎症は歯肉だけにとどまらず、菌や炎症物質が血液中に入り込み、たどり着いた先で炎症を引き起こす。
「この病の原因菌は、歯周病を発症しなくても、歯磨きや、糸ようじ、つまようじの使用、また、咀嚼などの日常的な行為で常に歯肉粘膜下に侵入しています。ただ、それによって炎症が起こるか起こらないかは、免疫力の差で異なる。そのため、歯肉が腫れてき場合は、免疫力に変化があったことを示しているといいます」(同)
ともあれ、自分の細胞によって作られた炎症物質も血液に乗って全身に伝わる。女性の場合、子宮に行けば早産や低体重出産が起こることが証明されているという。
「炎症物質は、血中のインスリンの働きも悪くします。その結果、膵臓が疲弊して糖尿病を悪化させるのです。歯周病を治すと、糖尿病がある程度改善することも分かっていますが、全身の動脈硬化も同じようにして起こります」(歯科医師)
また、歯周病は大動脈瘤で炎症を起こしている部分があると、サイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)の影響によってさらに炎症が進み、動脈瘤が急激に膨れて突然死を招くケースもあると言われる怖い病気だ。
「虫歯や歯周病といった口腔内のトラブルは、心臓疾患の大きなリスク要因といえます。実際、手術を受けるくらいまで心臓が悪くなってしまった患者さんは、口腔内の健康状態が悪いケースが少なくない。そうした患者さんは、そもそも栄養状態が悪く、口腔内の衛生にまで気が回らない人が多いこともあります」(内科医)
重大病にもつながる歯のトラブルを避けるためにも、いま一度、歯磨きを見直そう。