【爪水虫(爪白癬)】家族や周囲にも感染し大迷惑…完治までは1年以上! 意外と深刻な“爪水虫”の怖さ
日本人の10人にひとりが患っているという“爪水虫”。
前編記事で紹介したように足の水虫と違い、爪が厚くなったりボロボロになったりするだけで、痒(かゆ)みや痛みがなく本人の実害はほとんどない。しかし、治療を薦めるのは「神楽坂 肌と爪のクリニック」の野田弘二郎院長だ。
「白癬菌(はくせんきん)が住み着いている爪が供給源となって、治しても治してもぶり返す慢性的な水虫になることも多くあります。また、本人が気にしなくてもバスマットや爪切りなどに白癬菌が付着して、家族や周りの人に感染する可能性があります」
特に梅雨が始まるこの時期は白癬菌が繁殖しやすいというが、今から治療することで、足の水虫を予防できる。
これまで爪水虫の治療は、足の水虫以上に“面倒”だった。しかし近年、新たに塗り薬が登場したことで画期的に変化したと野田院長はいう。
「今までの爪水虫の治療薬は飲み薬でした。しかし、これらは患者さんによっては肝機能障害を起こすなどの副作用があり、定期的に血液検査が必要なんです。また、他に持病がある場合は薬の飲み合わせにも気を付けなければならなかったんです」
もちろん、飲み薬にも「強力な抗菌作用があるため、爪以外の水虫に対しても優れた治癒率を示す」というメリットはある。
「身体全体に薬が行き渡るため爪以外にも効果が現れ、同じ白癬菌が原因の股部白癬(こぶはくせん)や踵(かかと)など、皮膚の深いところにあって外用薬の効きにくい角質増殖型と呼ばれる水虫も同時にしかも強力に治療できます」
しかし、塗り薬は血液検査の必要もなく、トータル的に見れば金銭的にもお得。また、1日に1回塗るだけでいいので塗り忘れも少ないため、野田院長は塗り薬を薦めているという。
ただ注意点もいくつかある。
「足も水虫だからといって、皮膚にも塗ってしまうとかぶれてしまいます。また、治療は1年以上かかるので途中でやめてしまう人が多い。皆さん、元々、痒みなどの自覚症状がない上に皮膚と違ってなかなか変化が現れにくい爪は、効果が実感しづらく薬を塗るのに飽きてしまうんですよ(苦笑)」
足の水虫もそうだが、爪水虫の治療にはさらに時間がかかる。それは白癬菌を直接根絶できないためだ。
「今の技術では、ある種の抗生物質のように直接、菌自体を殺すことはできません。あくまで拡大させないよう押さえつけておくもの。なので爪に感染している場合は生え変わるまで続けなければならないんです。
皮膚の場合は角質層が入れ替わるのに28日程度といわれ、余裕を見て2ヵ月ほど薬をつければ治癒させることができます。ただ足の爪は伸びるスピードが遅いので、親指であれば1年以上は治療が必要です」
使用方法を守るのは基本。そして飽きないようにするためには工夫が必要だと野田院長は続ける。
「薬を塗っていると、白く濁ったり筋が入ったりしている部分も徐々に薄くなっていきます。ただ徐々に効果が現れるので、治っているのかわかりにくいんです。だから定期的にスマホで写真を撮るなどして、効果を実感できるようにしましょう」
水虫の原因である白癬菌の温床にもなりかねない爪水虫。もし「あれ?」と思ったら、病院で調べて粘り強く治療しておこう。