2017/09/02【病原性大腸菌】O157以外も危険!病原性大腸菌の症状・種類・対策法
- 2017/9/2
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【病原性大腸菌】O157以外も危険!病原性大腸菌の症状・種類・対策法
大腸菌とは……嘔吐・下痢などを引き起こす病原性大腸菌も
大腸菌とは、その名の通り人の大腸内に生息している細菌です。腸内細菌の1種であり、環境中に広く見られます。大腸菌は、温度や栄養などの条件が整えば、約20分に1回分裂します。約20分で1個が2個、2個が4個と倍々に増えていきます。
そしてこの大腸菌の中でも、下痢などの症状を起こす大腸菌を、「病原性大腸菌」と呼びます。少し専門的になりますが、病原性大腸菌には多くの種類があり、その種類は「2つの成分」で区別されています。一般的に「O157」と呼ばれているものの「O」は抗原と言うもので、その大腸菌の周りの壁などに見られる成分を示したものです。あまり報道などでは出ませんが、Oではななく「H」という抗原で細菌を区別することもあります。H抗原は、大腸菌が運動するために必要な器官であるべん毛に見られる成分を示しています。
一言で大腸菌といっても、O抗原だけでも181種類、H抗原には57種類があります。O抗原による分類が一般的で、血清型とも言われます。O157の正式なタイプは、「O157:H7」です。実際にはHはあまり表現されませんので、以下では「O抗原」を中心に考えていきましょう。
病原性大腸菌の5分類
病原性大腸菌は、その性質、症状によって、大きく5種類のグループに分けられます。
・腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E.coli、略語 EPEC)
・腸管組織侵入性大腸菌(enteroinvsive E.coli、略語 EIEC)
・腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli、略語 ETEC)
・腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli、略語EHEC)
・腸管凝集接着性大腸菌(enteroaggregative E.coli、略語 EAggEC)
O抗原の約170種類の大腸菌は、この5つのグループに分けられます。よく集団感染や死亡症例が起こって報道される「O157」は、4番目に記述した「腸管出血性大腸菌」に分類されます。
以下でそれぞれの特徴と症状、対策法等について解説します。
腸管病原性大腸菌とは……2歳以下に多く下痢を引き起こす
主に小腸の粘膜にくっついて、栄養を吸収する機能を低下して、下痢を起こします。2歳以下の子どもで感染することが多く、時には集団発生します。
粘液便や水のような水様下痢が特徴で、大量になると、脱水を起こすことがありますので注意が必要です。嘔吐、腹痛、発熱、身体がだるいなどの症状を伴うこともあります。
感染してから発症までの潜伏期間は12~24時間ですが、時には3日以降潜伏して発症することもあります。
症状の改善までにかかる期間は、乳幼児では1週間程度、大人で1~3日程度。子どもの方が治るのに時間がかかります。
(O1)、(O18)、O20、O26、O28、O44、O55、O86、O111、O114、O119、O125、O126、O127、O128、O142、O146、O151、O158、O166がここに分類されます。
腸管組織侵入性大腸菌とは……血液・粘液を含む下痢が起こる
主に大腸の粘膜組織の中に侵入することで炎症を起こす菌です。乳幼児に感染することはまれで、集団発生は少ないのですが、過去に集団発生例が報告されています。
血液、粘液、膿のようなものを含む下痢が見られます。何度も便意が起こってトイレにいきたくなる「しぶり腹」を起こしたり、発熱、寒気、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が出たり、痙攣が起こることもあります。
感染してから発症までの潜伏期間は早くて8時間で、約1~5日、多くは3日以内です。症状の改善には、2~3日程度を要します。
O6、O28、O112、O115、O124、O136、O143、O144、O152、O164、O167がここに分類されます。
腸管毒素原性大腸菌とは……海外旅行者の下痢症の原因にも
腸管内で大腸菌によって産生される毒素によって下痢が起こります。
大規模な食中毒や東南アジアやアフリカなどの上下水道が整備されていない国への海外旅行者の下痢症の原因となることの多いです。
水のような水様性下痢が見られ、ひどいときには、米のとぎ汁様な白い便が頻回になり、結果として脱水に至ります。腹痛、おう吐も見られます。
感染してから発症までの潜伏期間は早くて8時間で、12~72時間。1~3日で速やかに回復しますが、10日以上かかることもあります。海外旅行時には、水道水、生の野菜、果物は避けるようにしましょう。
O6、O8、O11、O15、O20、O25、O27、O63、O73、O78、O85、O114、O115、O128,O139、O148、O149、O159、O166、O167、O168、O169が、ここに分類されます。
腸管出血性大腸菌とは……O157が代表的
特に有名で、最も発生件数の多い「O157」はここに分類されます。
大腸に大腸菌が定着して、ベロ毒素という毒素を産生し、腸管からの水分吸収する機能を低下させ、血管が破壊されます。
まずは、腹痛と水のような水様性下痢で発症し、血液が混じった真っ赤な下痢が見られます。
嘔吐は少なく、微熱程度です。
感染してから発症までの潜伏期間は3~5日程度。
1週間程度で回復しますが、一部の患者では、溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併し、腎臓などの障害で、重症化すると死亡することがあります。この溶血性尿毒症症候群は、子どもや高齢者に多く見られ、さらに重症化しやすいと言われています。ベロ毒素を産生する大腸菌が溶血性尿毒症症候群を起こす可能性が高いです。さらに、頭痛を訴えたり、不穏状態になったり、傾眠傾向になってから、痙攣、昏睡を起こす脳症を合併することもあります。「溶血性尿毒症症候群の原因・症状・治療・予後」もあわせてご覧ください。
このように重症化する可能性のある腸管出血性大腸菌は熱に弱いので、75℃、1分以上の加熱すると死滅します。家庭での予防策としては食肉の十分な加熱と手洗いが有効です。
O1、O8、O18、O25、O26、O44、O55、O86、O103、O111、O115、O119、O124、O125、O126、O127、O128、O144、O145、O153、O157、O166、O167、O169がここに分類されます。O157が有名で最も多いですが、O26、O111、O121も報告されています。
特にO157が多く問題になるのはなぜでしょうか? それには3つの理由があります。
1つ目は、感染力が強いこと。多くの食中毒は100万個の細菌が体内に入ると起こると言われていますが、O157は100個程度の最近だけで症状が起こります。2つ目は、土や水の中で数週から数カ月生きることができ、低温にも強いため、冷蔵庫の中でも死滅しないこと。3つ目は血管を壊すベロ毒素を産生すること。ベロ毒素によって、溶血性尿毒症症候群や脳症を起こすことがあります。
O157に感染すると、4~8日程度の潜伏期間を経て、激しい腹痛と下痢を起こし、血便が出ます。大人であれば多くは5~10日間で自然によくなります。しかし血便が出て1~2日後に、溶血性尿毒症症候群や脳症を起こすことがあります。
O157は牛や豚などの家畜の大腸にあることがあるので、肉料理の時に注意が必要になります。また、肉を処理した調理器具で生野菜など、加熱しないものを処理しないようにしたいものです。
腸管凝集接着性大腸菌とは……海外旅行者や乳幼児は注意
細菌同士が集まって、接着して塊を作る(凝集接着)のが特徴です。南米やアフリカなどの発展途上国からの海外旅行者や乳幼児で見られます。
粘液を含む水様性の下痢で、時に、便は血液が混ったり、緑色になります。腹痛、嘔吐、発熱も見られます。感染から発症までの潜伏期間は、7時間~2日程度。3~7日程度で回復します。乳幼児や免疫力が低下している場合は、2週間以上下痢が続くことがあります。
ここに含まれるのは、O15、O44、O55、O78、O86、O111、O119、O125、O126、O127、O128、O157です。
このように病原性大腸菌には多くの種類があります。特に問題になるのは、上述した通り「腸管出血性大腸菌」で、さらにベロ毒素を産生するタイプの大腸菌です。しかし、どの大腸菌が原因になっているのかを同定するのには時間がかかることから、感染前の予防として大腸菌対策は非常に重要になります。
O157予防にも! 病原性大腸菌による食中毒予防法
O157を始めとする病原性大腸菌食中毒を防ぐためには、3つの原則があります。
つけない……細菌を食べ物につけないために、手を洗う
増やさない……食べ物に付着した細菌を増やさないために、低温で保存する
やっつける……食べ物や調理器具に付着した細菌をやっつけるために、加熱処理する
です。以上の3原則を徹底し、病原性大腸菌による食中毒を予防しましょう。