【研究報告】カキのウイルス 泡で除去…ノロ食中毒ゼロへ装置
海洋高や企業 来年秋実用化目標
精密機器メーカー「トスレック」(南区)と府立海洋高校(宮津市)などが、極めて微細な泡「ウルトラファインバブル(UFB)」を活用し、カキから食中毒の原因となるノロウイルスを除去する装置の開発を進めている。別のウイルスを使った実験では、ほとんど除去できることが確認され、来年秋にも実用化を目指す方針だ。(布江田嘉一)
UFBの新たな用途を模索していた同社が2016年11月から始め、同校の生徒のほか、カキに詳しい東北大の研究者、北里環境科学センター(相模原市)の検査分析の担当者らも参加している。
実験は、同校の敷地に設けられたテント内で実施。ノロウイルスの代替ウイルスとして実験に用いられ、人間に感染しないネコカリシウイルスをマガキや岩ガキに吸着させ、UFBを含んだ海水で20時間洗浄したところ、99%以上が除去された。
UFBは1000分の1ミリ未満で、肉眼で見えないほど微細なため、カキの消化器官まで入り込んで異物を取り除くことができる。生食用のカキは浄化タンク内で紫外線を照射して殺菌するのが一般的だが、ノロウイルスの除去率は岩ガキで92%程度。UFBの手法が確立されれば、安全性の向上が期待できるという。
今後は、ノロウイルスを使った実験も行って装置を完成させる方針で、カキの産地である広島県の漁協が導入に前向きという。
25日には、開発に参加している関係者らが同校に集まり、成果を発表した。同社の中尾順次・研究開発部長は「洗浄時間を短くするなどの工夫を重ねたい」と意気込んだ。
カキの大きさや重さを量る作業を担当した同校3年の西野海杜かいとさん(17)は「ウイルスを除去することができれば、安心して流通させることができる。実験に参加できてうれしい」と笑顔を見せた。
東北大の高橋計介准教授は「ノロウイルスのないカキは、生産者と消費者の悲願。紫外線を照射する浄化タンクにUFB装置を組み込めば、より効果的ではないか」と指摘している。
http://www.yomiuri.co.jp/…/k…/news/20180525-OYTNT50267.html…