【研究報告】ブタが感染する致死性ウイルスの起源が判明
2017年に中国で2万4000頭以上のブタを死に追いやった致死性疾患の原因が、コウモリ起源のウイルスであることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究結果は、動物の医療、公衆衛生、および世界経済に対するコウモリ、ひいては野生生物全般のウイルス感染の監視に積極的に取り組むことの価値を強調している。
中国広東省の4か所の農場でウイルス感染症が流行し、感染した仔ブタはブタ急性下痢症候群(SADS)を発症し、下痢や嘔吐を起こして死んでしまった。今回、Zheng-Li Shiたちの研究グループは、この原因として、新たに発見されたコロナウイルスの1種SADS-CoVを特定した。SADS-CoVのゲノムは、この感染症の流行源である養豚場近くの洞窟に生息するキクガシラコウモリから2016年に単離されたコロナウイルスのゲノムと98%同じだった。
コウモリは、新興ウイルスの重要なリザーバーだ。例えば、キクガシラコウモリは、約15年前に700人以上の命を奪ったSARSコロナウイルスのリザーバーだった。最近のブタ疾患の流行の発生地は、SARSの最初の症例の発生地の近くと考えられており、この研究結果から、新興疾患の出現が頻発するという中国南部のユニークな特徴を浮き彫りにしている。ブタ疾患の流行は続いており、今回の研究は、コウモリとその他の野生生物が保有するウイルスの多様性を理解することの重要性を明確に示している。