【研究報告】世界初!骨と同じ成分で人工骨を開発 実用化へ 九州大
事故や病気で骨を失った場合、従来は患者自身の骨を移植して再建する方法が一般的だったが、九州大学などの研究グループは世界で初めて、骨の成分と同じ人工骨の開発に成功した。すでに歯科用インプラント治療で使える人工骨として薬事承認されたという。
骨の再建手術には、体へ同化する効果が高いことから自分の骨を使う「自家骨移植」が一般的だが、患者の負担も大きく、欠損部分が大きい場合、骨の量にも限界があるためこの方法は使えない。人工骨には、亡くなった他人や動物の骨を使う方法もあるが、感染症のリスクなど安全性の問題などがあるため、日本ではほとんど行われていない。
九州大の石川邦夫教授らのグループが、骨を構成する成分の組成を調べた結果、約70%はリン酸カルシウムの一種である「炭酸アパタイト」だと突き止めた。以前から粉末状の炭酸アパタイトを作る技術は確立していたものの、体内に移植した場合、炎症を起こすおそれがあるとして臨床現場で使うには問題があった。そこで石川教授らは、炭酸アパタイトをブロック状や顆粒状にする技術の開発に成功し、歯科医療メーカーのジーシー社が実用化。
徳島大学病院や東京医科歯科大学の附属病院など複数の医療機関で臨床試験を行った結果、人間の体内で骨に置き換えられることが実証された。
上アゴの奥歯部分にインプラントを埋入するうえで、骨が十分に存在しない22人の患者を対象にした臨床試験では、炭酸アパタイトの顆粒を移植した半年後にインプラント手術を行ったところ、すべての患者で新しい骨が形成されたという。
歯科用インプラント治療の分野ではこれまで、薬事承認された人工骨がなかったため、自家骨を使うしか移植方法がなかったが、今回初めて薬事承認されたことで、高齢者など自家骨の採取が難しかった患者や、骨が不足しているためにインプラント治療が受けられなかった患者にも治療の道が開かれると期待されている。