気温が上昇すると心配なのが食中毒です。
日本では年間約1500件、3万人前後の食中毒が報告されていますが、軽い食中毒では医療機関を受診しないので、実際はその100倍あると推計されています。
特に作ってから食べるまで時間をおく弁当は傷みやすいので、暑い時期は食中毒対策が必要です。
暑くなると食中毒が増える理由
気温が上がると、なぜ食中毒が増えるのでしょうか。広島市衛生研究所が、腸炎ビブリオを使って実験をしました。腸炎ビブリオは代表的な食中毒菌で、増殖が速く、8〜10分ごとに2分裂して増殖します。
実験では、この腸炎ビブリオを20個ずつ、温度を変えて培養しました。6時間後、25℃では1万個に増えましたが、35℃に温度を上げると100万個に増殖しました。腸炎ビブリオは体内に10万〜100万個入らないと食中毒を起こさないとされるので、気温が低いときは大丈夫だったお弁当も、気温が上がると食中毒を起こす恐れがあるのです。
食中毒菌が増殖する3要素
食中毒菌が増殖するには、「栄養分」「水分」「温度」の3要素が必要とされます。栄養分を除去するわけにはいきませんが、水分と温度はコントロールできます。
水分は多いほど食中毒菌が増殖するため、食中毒を避けるには水分が多いものを避けることが食中毒予防になります。具体的には、煮物、野菜などの炒め物、生野菜、ポテトサラダ、炊き込みご飯などは避けることです。食材に醤油やドレッシングをかける場合は、別容器に入れて、弁当を食べる直前にかけるようにします。
対策1/気温が高い時期は保冷剤が必須
食中毒菌が増殖するもう一つの要素は温度です。一般的に食中毒菌は15〜40℃で増殖しますが、温度が低いほど増殖が抑えられます。そのため、お弁当は冷めてからフタをします。また、弁当箱に保冷剤を添えて低温に保つのも食中毒菌の増殖を防ぐのに有効です。
最近は弁当用の冷凍総菜を使う人が増えていますが、凍ったまま弁当に詰めれば弁当を冷やす効果もあります。温度が上昇する車の中に弁当を置きっぱなしにするのは厳禁で、このような場所に置くときはクーラーボックスを使います。
対策2/前日の残りは必ず加熱する
もちろん加熱も大切です。食中毒予防の基本は食材の中心部まで75℃・1分以上加熱することです。たとえば、厚さ3cmのハンバーグを焼く場合、中心温度が75℃以上になるまで9分近くかかるというデータがあります。それでは焼き過ぎなので、フタをして中心温度を上げます。
前日の晩ご飯の残りを弁当に入れる場合は、必ずフライパンや電子レンジなどで十分に加熱してから弁当に詰めてください。
対策3/食中毒を防ぐお酢の効果
食品メーカーのミツカンが、食中毒を予防するお酢の効果を紹介しています。たとえば、ラッキョウに病原性大腸菌O157を100万個接種して、調味酢(酸度1.2%、pH3.1)に漬け込み、室温(25℃)で24時間置きました。すると病原性大腸菌O157は100個以下になったというのです。
お弁当のご飯に梅干しを入れて食中毒を予防することは昔から行われていますが、ご飯全体を食中毒菌から守れるわけではありません。そこでお酢を利用するのです。お酢は酢酸濃度が0.1%以上で効果が出るとされます。米2合につき大さじ1杯の酢を加えて炊くとこの濃度になります。酢の香りがしますが、暑い時期はこれで食中毒を予防しましょう。
万全の備えをしても万が一のことがあります。お弁当を食べるときは、必ず匂いをかいだり、糸を引くなど異常がないかチェックしましょう。