2018/11/10【インフルエンザ】1回飲めばOK インフルエンザに注目の新薬登場
- 2018/11/10
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- インフルエンザウイルス, ゾフルーザ, タミフル
“1回飲めばOK”の新薬、ついに実用化
そろそろインフルエンザの流行が気になる季節になりました。インフルエンザの流行は、例年11月下旬頃から始まり、2月上旬頃にかけてピークを迎えます。毎年世界中で流行がみられますが、昨年は日本でも多数の方が発症しました。
インフルエンザに感染してしまった場合には、これまで主に4種類の治療薬、タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタが処方されました。これらは、数日間の服用や、子供や高齢者にはやや難しい吸入が必要です。
「1回飲めば治るクスリがあればなあ」と考えた方も多いのではないでしょうか。何と、その夢のような新薬が、今年3月に承認されたのです。
それは、“錠剤を1回服用するだけでOK”という、画期的な新薬「ゾフルーザ」です。インフルエンザ治療薬として、この冬から本格的に処方が始まると思われます。
非常に利便性が高く、用法としては、1日1回飲むことで完結しますので、飲み忘れも無くなります。季節性インフルエンザA型とB型の両方で使え、体重が10kg以上なら子供でも服用できます。
ウイルス増殖をストップ
「ゾフルーザ」は、これまでの治療薬とは、全く異なる働き方=新しい作用機序でインフルエンザ・ウイルスを抑えます。
では、既存薬との働き方の大きな違いはどういうものでしょうか。
インフルエンザ・ウイルスはまず、鼻や喉の粘膜の細胞に入り込んで感染します。そして、入り込んだ細胞の中で増殖するのです。増殖したウイルスは、周囲に広がろうと、その細胞から外に出て、どんどん増えていきます。なんと、24時間で100万倍に増えるといわれているのです。
これまでの治療薬は、細胞内で増えたウイルスが細胞から外に出るプロセスを阻むことで、周りの細胞への感染拡大を防ぎます。
一方、「ゾフルーザ」は、外に出ていく前の段階、感染した細胞内でのウイルス増殖そのものを抑えるのです。新たな作用機序のため、既存薬に耐性のあるウイルスが出現しても、効果を発揮することも期待されています。
周囲への感染拡大も抑え、副作用も少ない
では、既存薬に比して、効果はどうなんでしょうか。
2016~17年に行われた治験では、インフルエンザA型またはB型に感染した12~64歳の日米の患者計1064人を対象に、“ゾフルーザ”・タミフル・プラセボ(偽薬)の3群に分けて投与しました。(治験時、タミフルは10代への投与が原則中止だったため20~64歳。タミフルの10代への投与は18年8月に再開)
症状がなくなるまでの時間は、“ゾフルーザ”とタミフルでそれほど変わらなかったのですが、体内からウイルスが排出されるまでの時間に差が現れました。タミフルでは排出まで72時間だったのに対し、“ゾフルーザ”は24時間でした(いずれも中央値)。(プラセボでは96時間)
つまり、「ゾフルーザ」はタミフルより2日ほど早く、患者の体内からインフルエンザ・ウイルスを急速に無くせるという結果になったのです。
これには、家族内や学校、職場での感染拡大を抑えられると言う、大きな意味があります。インフルエンザは、発症から3日間ほどが最も感染力が高いと考えられているからです。
副作用については、上記の治験では、プラセボ(偽薬)と同じ程度の出現率で、タミフルと比べても低いという結果でした。副作用で最も多かったのが下痢で11件でした。
日本発の新薬 米国でも承認
「ゾフルーザ」の登場で、インフルエンザ治療の選択肢は広がりました。日本の塩野義製薬が開発しましたが、昨シーズンにインフルエンザが大流行した米国でも、先日承認されました。
先述したように、服用は1回だけ。症状が出たら、出来るだけ速やかに服用します。
体重が10kg以上あれば、子どもでも服用可ですが、妊婦に対しては原則使わないことになっています。体重が80kgを超える場合は、倍量が必要になるため、費用は高くなります。
画期的な治療薬が登場したとは言え、インフルエンザは予防することが最も大切です。特に、インフルエンザの予防接種は6~7割の発症を予防できると科学的にも証明されています。予防接種の効果は、接種後約6ヵ月と言われています。
そろそろ接種を考える時期になりました。
なお、子どもは免疫がつきにくいため、2回の接種が必要になります。