2018/06/07【カンピロバクター】鶏肉の加熱不足「危ない」 生、たたき…減らないカンピロ食中毒
【カンピロバクター】鶏肉の加熱不足「危ない」 生、たたき…減らないカンピロ食中毒
カンピロバクターによる食中毒が頻発している。主な原因とみられるのが、刺し身やたたきなど生や加熱不十分で提供される鶏肉だ。実は飲食店に卸される鶏肉のほぼすべてが「加熱用」で、生食には適していない。これから夏にかけ、細菌による食中毒が増える時期。鶏肉は十分加熱したものを食べよう。
◆「加熱用」生で提供
カンピロバクターは、鶏や牛、豚など家畜の腸管内に生息する細菌。特に鶏の腸管内にいる確率が高く、市販の鶏肉の6~8割から菌が検出されたとの調査結果もある。
厚生労働省によると、昨年のカンピロバクターによる食中毒の発生件数は320件。食中毒全体(1014件)の32%を占め、件数で最多だった。タレントの渡辺直美さんらの発症で昨年話題になったサバなどに寄生する寄生虫、アニサキスによる食中毒は23%で2位。食中毒全体の発生件数は、この数年で減っているのに、カンピロバクターによる食中毒は横ばい状態が続く。今年も34件(1~3月の速報値)で、昨年同期の35件と変わらない。
原因として多いのが、飲食店で提供される生や半生の鶏肉だ。飲食店が仕入れる鶏肉は、生食を前提としたものがわずかに流通する南九州の一部地域を除いて、ほぼすべてが加熱用だ。それを、刺し身やたたきなどで提供する店が後を絶たない。
◆注意喚起でも発生
そこで厚労省は昨年、食鳥処理業者や卸売業者に対して、飲食店に卸す鶏肉に「加熱用」と表示するよう要請。鶏肉を生で供する飲食店に、十分な加熱の必要性があることを認識してもらうのが狙いだ。
しかし、厚労省が昨年起きたカンピロバクターによる食中毒を調べると、「加熱用」と表示があるのに、生や加熱不十分な状態で提供していた飲食店が約半数に上った。
5月に高知市が発表した居酒屋の食中毒事例も同様だった。カンピロバクターによる食中毒は、食後1~7日(平均2~3日)で発症する。主な症状は腹痛や下痢、発熱、嘔吐(おうと)など。
同市の事例では20~40代の男性4人に下痢や発熱の症状が出て、うち1人が入院、全員の便からカンピロバクターが検出された。
市保健所生活食品課によると、この居酒屋には昨年12月にも鶏肉を生で供しないよう注意喚起していたという。同課の担当者は「利用者からの求めもあったかもしれないが、食中毒患者が出たのは残念」と話す。
◆食衛法で禁止されず
食品衛生法では、牛のレバーと豚の肉・レバーを生食用に提供することを禁止している。これらの肉・レバーは、感染すると死に至ることもある腸管出血性大腸菌やE型肝炎ウイルスに汚染されている可能性があるためだ。
一方、鶏肉はカンピロバクターによる汚染の可能性は高いものの、死亡のリスクが低いこともあり、生食の提供を禁じていない。焼き鳥やバーベキューなどで加熱調理が不十分だったり、まな板などの調理器具を介したりでも起こるので、生食を禁止するだけでは防げないこともある。
カンピロバクターの食中毒は症状が治まってから1~2週間後にギランバレー症候群を併発することがある。主に筋肉を動かす運動神経に障害が出て、手や脚に力が入らなくなる難病だ。
◆繰り返す業者告発も
厚労省は3月、加熱用鶏肉で食中毒を繰り返す業者を、食品衛生法違反容疑で告発するよう都道府県などに通知で促した。同法違反が適用されれば、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる。
担当者は「鶏肉は『新鮮だから安全』ではない。カンピロバクターによる食中毒は、生・半生・加熱不足の鶏肉料理で多発している。飲食店はリスクの高さを認識し、加熱を徹底してほしい」とし、消費者にも「飲食店ではよく加熱された鶏肉料理を選んで」と呼びかけている。
https://www.sankei.com/li…/news/180607/lif1806070004-n1.html