
「スペイン風邪」は1918、1919年の2年間で3波にわたって流行、多くの命を奪ったインフルエンザだ。さも発生国であるかのようなスペインだが、そうではない。
第1波の流行は18年春、米国とフランスの米軍駐屯地で始まった。その時の毒性はさほど強くなかったが、同年8月、米軍が下船したフランスの港湾都市、米国のボストンなどで同時多発した第2波は感染力が強く、当時の医療技術では手の施しようがなかった。
米兵だけで6万2千人が犠牲になり参戦していた第1次世界大戦の同時期、欧州戦線での戦死者数を上回った。スペイン風邪ではなく、アメリカ風邪とした方が的確だった(H・P・ウィルモット著「第一次世界大戦の歴史大図鑑」)。
県は20日、県内がインフルエンザの流行シーズンに入ったと発表した。定点観測している59医療機関からの10~16日の患者報告数は、1医療機関当たり1・15件となって、流行開始の目安となる「1」を超えた。流行シーズン入りは、昨季に比べ6週間遅かった。
スペイン風邪が流行した大戦中、交戦国は情報統制したが、非参戦国のスペインはその必要がないため国内でインフルエンザがはびこり多数の死者が出ているというニュースが海外へ流れた。スペイン風邪がその名になった事情である。
実は、スペイン風邪で最大の被害を出したのは大戦終了後、19年春に始まった第3波。戦争で、栄養失調に陥っていた人たちに襲いかかり2千万人以上が死亡した。流行情報に留意すること、しっかりと栄養を取ることも感染予防になる。