2018/06/11【ニパウイルス】死亡率75%!コウモリが運ぶ「死のウイルス」拡大 日本製薬品に期待も /インド
【ニパウイルス】死亡率75%!コウモリが運ぶ「死のウイルス」拡大 日本製薬品に期待も /インド
インドで、コウモリが宿主とみられる「ニパウイルス」が拡大し、感染症による死者が相次いで確認された。発症した場合、最高75%が死亡するとされる致死性の高いウイルスだ。まだワクチンが開発されておらず、対策は国際的な課題となっている。衛生環境が悪く「感染症の宝庫」とも指摘されるインド。地元メディアには日本企業の薬品に期待する記事が登場している。
意識障害や脳機能不全…高い致死率
ニパウイルスによる感染症が報告されているのは、インド南部ケララ州だ。
州政府の発表によると、アラビア海に面する同州コジコデやマラプランで5月19日、ニパウイルス感染症で3人が死亡した。周辺住民や治療にあたっていた看護師にも感染が広がり、6月6日時点で17人の死亡が確認されている。
ニパウイルスは1998年にマレーシアで初めて確認された。感染すると、当初は目立った症状はないというが、発熱、頭痛、めまいなどの症状が現れ、意識障害や脳機能不全などが起こる。
国際保健機関(WHO)によると、発生した地域や時期によって差異はあるものの、死亡率は40~75%と推定されている。2004年には、バングラデシュで流行が確認され、14人が死亡している。
ニパウイルスの自然界における宿主はコウモリとされ、ケララ州でも感染者の自宅そばの井戸からは、コウモリの死体が見つかったという。州政府は古い井戸や廃棄された井戸にはコウモリが巣を作っている可能性があるとして、近づかないよう呼びかけている。
「バナナを食べてはいけない」…デマ拡散
インド政府はケララ州の中で感染がとどまっていることから、「感染は大規模ではなく、局地的なものに過ぎない。専門家チームが引き続き状況をチェックしている」としており、国民に冷静な対応を呼びかけている。
だが、北部ヒマチャルプラデシュ州では学校の屋根で死んだコウモリが発見されただけで騒動となるなど、インド国内がニパウイルスに対して敏感になっていることがうかがえる。
ソーシャルメディアでは「バナナを食べてはいけない」などのデマが拡散。宿主とされるコウモリが果実を食料としていることから発展した噂とみられる。捜査当局は悪質な偽情報12件について、発信源を特定する作業を進めているという。
また、コウモリを神聖なものとして崇拝する東部ビハール州の集落がなぜかニュースで取り上げられ、「コウモリは繁栄の象徴だ」という住民のコメントが紹介されるなど、報道もさまざまな方向に過熱した。
インドメディア「日本製薬品」に期待
関係者は早期収束を期待するが、インドだけにかぎらずニパウイルスの対策は国際的な課題だ。
WHOは2月、世界で拡大のリスクがある感染症リストを公表したが、エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)などとともにニパウイルス感染症も含まれている。治療法確立に向け「緊急に研究開発を進める必要がある」としている。
ロイター通信によると、今回のインドでの発生を受け、感染症へのワクチン開発を目指す「感染症流行対策イノベーション連合」(ノルウェー)が、2つの研究チームとワクチン開発に向けた契約を締結した。ただ、いつまでの開発を目指すかなど詳細は判明していない。
そんな中、インドメディアには、日本製薬品の効果に期待する記事が登場した。印英字紙「DNA」(電子版)は、富山化学工業(東京)が新型インフルエンザ治療薬として開発した「アビガン錠」(一般名ファビピラビル)が「解決策となりうるのではないか」と紹介する。アビガン錠には細胞内でウイルスの増殖を防ぐ作用があることから、ニパウイルス感染症にも効果を発揮するのではないかとの指摘だ。
富山化学工業によると、対ニパウイルスについても、マウスへの実験で効果を示した論文が5月に公表されている。同社は「人に効果があるかは不明だが、(症状の)抑制効果が認められたことは間違いない」と説明している。
ただ、それでもワクチンがない状況には変わりがない。現地医療ジャーナリストは「インドでは衛生状態が地方に行けば行くほど悪く、また今後雨季の到来もあり、感染症拡大への懸念は強い。今回の流行は収束したとしても、ワクチンがない実態は人々を不安に駆り立てるだろう」と分析している。
http://www.sankei.com/premium/…/180611/prm1806110003-n1.html