2018/03/25【パンデミック】コードネーム「疾病X」とは何か? WHOが警告、世界で大流行する可能性
【パンデミック】コードネーム「疾病X」とは何か? WHOが警告、世界で大流行する可能性
「疾病X」というコードネームが、医療保健業界で話題になっている。今年2月、感染症対策を促す世界保健機関(WHO)のリポートの中に記載されたものだ。WHOはこうした未知の感染症が、世界的に大流行する可能性を示唆。エボラ出血熱やジカ熱など近年、世界を震撼させた感染症が現に発生しており、WHOは潜在的な感染症への備えや研究開発を促している。
8つの感染症リスト
WHOのリポートは「(R&D)ブループリントが優先すべき感染症リスト」という題目で、ホームページ内に掲載された(http://www.who.int/blueprint/priority-diseases/en/)。
R&Dブループリントは、2014年に西アフリカで流行したエボラがきっかけで、感染症に対応する医療技術やワクチンの開発のために生まれた計画。世界の専門家が協力し、16年5月にはWHOの加盟国が計画の発展への期待を表明した。
リポートは、全人類に感染する可能性がある感染症として8つを挙げている。
そのトップは、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)だ。国立感染症研究所によると、これはダニが媒介する人獣共通感染症で、症状としては発熱や出血が特徴。1944年にクリミア地方で旧ソ連軍兵士の間で発生したのが世界に知られるようになり、その後アフリカのコンゴでも確認された。
リポートではさらに、感染すると致死率が50%以上とされるエボラや、ナイジェリアで流行したラッサ熱への警告を示し、2003年に世界的に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)なども挙がった。
「テロ行為で生まれる可能性」
リストの最後にある「疾病X」のXは、unexpected(予想外)を意味する。リポートでは、「現時点では人への発症が確認されていない病原体が引き起こす深刻な感染症になりうる」と記載している。
米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・フォーシ所長はCNNのインタビューで、「過去の経験で学んだ通り、われわれは時として予想外の事態に見舞われる。ジカ熱は予期できなかったし、エボラが都市を襲うとも思っていなかった」と解説する。
英紙テレグラフは、遺伝子操作技術が発展し、新しい病原体は自然発生するのではなく、「偶然か、あるいはテロ行為として生まれるかもしれない」と指摘。WHO科学アドバイザーのヨンアルネ・ロッティンゲン氏は同紙に「こうした病原体は動物から人へと感染し、すぐに世界に広がる。こうした大きなリスクに対し、われわれは認識し、準備しなければならない」と警告した。
よりよい診断方法を
では、こうした未知の感染症にどう対応すべきか。
WHOのリポートは現在の対応が不十分であることを認めた上で、まず、よりよい診断方法が必要であることを指摘した。
また、いまある薬やワクチンをさらに改善させることや、さまざまなウイルスについての研究を深める必要性、その研究に基づいて対応を加速させることの重要性なども指摘している。
世界保健機関(WHO) 1948年に設立され、世界的な保健問題を主導し、健康に関する研究課題を作成し、規範や基準を設定する。スイス・ジュネーブに本部があり、加盟国は約190カ国。加盟国へ技術支援を行い、健康志向を監視、評価もする。