【ピロリ菌】ピロリ菌の検査、除菌、どんなことをするの?
ピロリ菌といえば、慢性胃炎や胃潰瘍の原因の一つとして知られているが、実はこの菌が発見されたのはほんの30年くらい前(1983年)のこと。最近になって胃腸との関係がクローズアップされ、皆が気にするようになった。今回はそんなピロリ菌について、どのようにこの菌へ感染するのか、検査と除菌の方法、家族への感染対策について、 About「家庭の医学」ガイドの清益功浩さんに聞いた。
■食べものの口移しでも感染する
まずはピロリ菌がどのように感染していくのかを聞いた。
「ピロリ菌は、口から侵入することで感染します。いわゆる経口感染ですね。しかし、その感染経路については、まだよくわかっていません。感染時期ですが、胃中の酸性の程度が弱い幼児期がほとんどです。母から子へ、特に、食べ物の口移しなどによって感染すると考えられています」(清益さん)
なんと、大人になってからでなく幼児期での感染がほとんどという。小さいお子さんをお持ちのお母さんは、注意した方がよさそうだ。
■ピロリ菌の検査方法
では、感染したかどうかはどうやって調べるのだろう。
「ピロリ菌は胃の中にいますので、内視鏡を使って胃の粘膜の一部を採取し、その組織を使って検査します。具体的には、ウレアーゼと呼ばれる酵素があるかどうか、顕微鏡でピロリ菌を直接見られるかどうか、または培養検査でピロリ菌が見られるかどうかを検査します」(清益さん)
内視鏡検査となると、ちょっと身構えてしまう。他に方法はないのかも聞いてみた。
「もう一つの方法として、内視鏡を使わない検査があります。これには、吐いた息(尿素呼気試験)と便(便中抗原測定)と血液(抗体)が使われます」(清益さん)
内視鏡検査以外にも方法はあるとのこと。それぞれの方法を詳しく聞いた。
「尿素呼気試験をするときは、検査薬(13C-尿素)を服用してもらいます。ピロリ菌に感染している場合、ピロリ菌がもつウレアーゼによって尿素が分解され、呼気中に13CO2という特殊な炭酸ガスが多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していなければ、尿素が分解されないため13CO2の呼気排泄はほとんど起こりません」(清益さん)
続けて便中抗原測定について教えていただいた。
「便中抗原測定というのは、ピロリ菌の一部を検出する検査で、便にピロリ菌または菌の一部がある場合、陽性ということになります。血液(抗体)検査は、感染することで陽性になり、過去に感染した場合でも陽性になりますね」(清益さん)
抗体は10.0U/ml以上で陽性になるが、陰性だったとしても他の検査と合わせた総合的な判断が必要になるという。いろいろな検査方法があるため、気になる人は医師に相談してみるとよいだろう。
■ピロリ菌の除菌、家族への感染対策
さて、ピロリ菌に感染していることがわかったら、どのように対処すればよいのだろう。
「ピロリ菌が胃の中にいることがわかったら、除菌することになります。胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を1週間服用します。この除菌療法で約75~90%は除菌されると報告されています」(清益さん)
薬を服用する際は注意すべきことがあるという。
「ちゃんと除菌するためにも、用法用量はしっかりと守りましょう。自己判断で服用を中止したり、飲み忘れたりすると、抗菌薬が効かないピロリ菌になり、除菌が難しくなります。一定期間経過後に、改めてピロリ菌の有無を確認しますが、もしも除菌できていなかった場合は抗菌薬を変更し、さらに1週間服用することになります」(清益さん)
最後に清益さんは、家族への感染対策を教えてくれた。
「ピロリ菌は口から移りますので、食べ物の口移しやスプーン、フォーク、コップや皿などの食器を使い回さないようにしましょう。特に、胃酸の酸性が弱い小さい子供への口移しやチューは避けた方がよいでしょう」(清益さん)
愛情表現としてのチューだけでなく、食器も感染経路とのことなので気を付けたい。子供に接することが増えることを機に、検査にいくのもよいかもしれない。