【ペストコントロール】蚊が人間に寄ってくる3つの要素とは?
日本が世界に誇る各界の“知のフロントランナー”を講師に迎え、未来の日本人たちに向けてアカデミックな授業をお届けするTOKYO FMの番組「未来授業」。8月7日(月)の授業講師には、東京慈恵会医科大学教授の嘉糠洋陸さんが登場!
嘉糠さんの専門は衛生動物学と寄生虫学で、特にマラリアやジカ熱、デング熱などの感染源となる蚊の研究を長年続けており、研究室では万単位の蚊を飼育する、言わば蚊のスペシャリスト。そんな嘉糠さんに、蚊の知られざる生態やメカニズムについて4日間にわたりお話を伺いました。
未来授業1時間目となるこの日の放送では、「なぜ、蚊は血を吸うのか」をテーマに、蚊の基礎知識をお届けしました。
日本に生息している蚊は約100種類。大きく分けるとヤブカ、イエカ、ハマダラカの3種類で、動物や人間の血を吸い、その血を元に1匹につき約100~200個ぐらいの卵を作ると言われています。
ちなみに、血を吸うのはメスだけで、オスは花の蜜などを吸って生きているのだそうです
嘉糠さん曰く、蚊やマダニだけでなく、ハエ、カメムシなどの中にも血を吸うものがいるそうです。これらの虫にとって、この“吸血する”という行為は、進化していく過程で何かしらの大きなメリットがあったのだと考えられていますが、その理由についてはまだ解明するまでには至っておらず「僕もぜひ知りたい」と嘉糠さんはさらなる探求心を覗かせます。
夏は特に季節柄、海や山などのレジャーで自然に触れ合う機会も増え、虫刺されに悩まされている人も多いと思いますが、そこで気になるのがメスの蚊が一体どのようにして動物や人間を見付け出し近づいてくるのかというメカニズム。
食べ物を得ることは生物が生きていく上でとても大事なことであり、蚊は血の供給元である動物や人間を的確に見付ける能力に極めて長け、「この感知する能力こそが蚊の繁栄を支えているといっても過言ではない」と嘉糠さんは言います。
嘉糠さんによると、蚊が獲物を認識するのには3大要素と呼ばれるものがあり、それは動物や人間が出す二酸化炭素、ニオイ、熱なのだとか。
一番はじめに感知するのは二酸化炭素。何と蚊は10メートル先でも呼気として出てきた二酸化炭素を認識するのだそうです。とはいえ、この段階では頭にある触覚で認識しただけにすぎず、「どこかに人間がいるぞ……」というレベルで、まだ獲物がどこにいるのかまでは分かりません。
二酸化炭素を認識した蚊が次に感知するのはニオイ。約100種類ぐらいあると言われる汗や体臭などのニオイを辿りながら、ニオイの濃くなる方向へとどんどん移動します。
そして、ニオイを頼りに獲物のそばまでやってきたら、最後にそれが生き物だと判断する材料が熱。蚊は人の体温を認識して、皮膚の上に取り付き血を吸います。このように「蚊は段階的に要素を辿って動物や人間の皮膚まで辿り着くんです」と嘉糠さんは解説してくれました。
嘉糠さんの著書「なぜ蚊は人を襲うのか」によると、蚊は視覚や聴覚があり、中には聴覚で生き物の鳴き声を聴き分ける種類もいるのだそうです。蚊のほとんどは体長が15ミリ以下と、人間とは雲泥の差ですが、これほど感知能力に長けているとは驚きです。
次回、8月19日(土)配信の記事では「蚊の針に隠された秘密」と題して、蚊が血を吸うときの驚きの仕組みについてさらに詳しく紐解いていきます。お楽しみに!
https://news.nifty.com/ar…/entame/showbizd/12199-YlPFdGXG0M/