【公衆衛生】猛暑の被災地は感染症リスク懸念 マスク着用や手洗いなど対策を
西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町地区。連日の猛暑で被災者の体力が奪われ、衛生環境の悪化などから感染症の発症リスクが懸念されている。避難所では清掃や除菌といった対策が取られ、被災家屋の消毒も進んではいるものの、破傷風やノロウイルスによる食中毒などに注意が必要で、専門家は「マスクの着用や手洗いなど、あらゆる対策を徹底してほしい」と呼び掛けている。
18日、多くの被災者が避難生活を送る二万小(同町上二万)の体育館で、ボランティアらが清掃作業と消毒を行った。感染症防止と衛生対策の徹底が目的だ。
被災直後から生活する男性(81)は「多くの人が出入りするので衛生面が心配だった。消毒してもらえてよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
各避難所はこまめな手洗いやマスクの着用を呼び掛けるなど、対策を強化。岡田小(同町岡田)では、出入り口付近にアルコール消毒液を置き、「くつをさわった手です! 消毒しましょう」と書いた段ボールを置き目立たせている。
「被災で心身の疲れがたまっている時は、普段発症しない感染症にかかりやすくなっている」と指摘するのは、県環境保健センターの岸本寿男所長だ。
避難所生活が長引くと、誤嚥(ごえん)性肺炎や食中毒が起きやすくなるほか、自宅を片付ける際にけがをすると、傷口から細菌などが入り込み、抵抗力が低下した状態では死亡するケースすらあるという。
水害で流入した汚水は下水や家畜のふん尿なども含み、浸水した家屋の床下や壁に大腸菌など細菌が混入している可能性がある。市は真備総合公園(同町箭田)で消毒液の無料配布と噴霧器の貸し出しを14日から開始し、被災者らが利用。高齢者ら自力での対応が難しい場合は出前消毒を行っている。
災害から2週間余りがたつものの、土ぼこりも住民やボランティアの悩みの種だ。県眼科医会が同町地区の避難所2カ所で行った出前診療で、受診者92人のうち半数近くが細菌などによる結膜炎だった。
診療に当たった辻眼科(岡山市北区奉還町)の辻優院長(県眼科医会副会長)は「ボランティアが帰宅後に目の痛みを訴えて受診するケースも多い」とし、外出時や活動の際はゴーグル持参を勧める。
岸本所長は「体の異常を感じたらすぐに医療機関を受診し、ボランティアも体調を整えてから現地に入ってほしい」としている。