【性感染症】性行為感染症(STD) 性行為以外でうつることも
性行為感染症(STD)は、性行為によって感染する病気の総称、いわゆる性病です。
ただし注意してほしいのは、「性行為でしかうつらない病気」という意味ではないことです。性行為に近い行為や、他人の唾液(だえき)やせき・くしゃみのしぶきなどが偶然、口や目に入ったりしても感染する可能性はあるのです。また、消毒処置が不十分なままでのピアスの穴あけや、刺青の刺入(しにゅう)でも感染があり得ます。
ですから、万が一STDにかかったとしても、必ずしも性行為のパートナーのせいとは言い切れません。性行為とは無関係に、知らないうちに自分がSTDになったかもしれませんし、同じようにSTDになったパートナーから性行為を通じてうつされた可能性もあるからです。
STDはたくさんあります。代表的な病気は、クラミジア感染、性器ヘルペス、梅毒、淋病(りんびょう)、細菌性膣症、B型肝炎、後天性免疫不全症候群(エイズ)などです。
このうち、現在の日本でとくに頻度が高いのは、クラミジア感染、性器ヘルペス、梅毒です。
免疫機能を破壊するエイズは怖い病気ですが、原因となるエイズウイルス(HIV)は、唾液(だえき)からは感染せず、避妊具なしの性行為か血液に接触しない限りうつるものではありません。
日本で最も流行しているSTDであるクラミジア感染症はとくに若い女性に多く見られます。女性の方が性器の構造上感染しやすいのです。
クラミジアは感染しても約8割が無症状です。たとえ症状が出たとしても軽く、1~3週間の潜伏期の後、おりものの増加や下腹部の痛みなどが出る程度です。しかし、感染に気づかずにいる間にパートナーにうつしてしまったり、生殖器の感染症として重症化したりすることがあります。男性には、排尿時の痛みやうみが出るといった症状がみられます。
「性器ヘルペス」はヘルペスウイルス(Ⅱ型)によって生じます。ヘルペスと言うと、唇やその周囲に水疱(すいほう)ができて痛がゆくなる「口唇ヘルペス」を経験した人がいると思いますが、それはヘルペスウイルス(Ⅰ型)が原因です。口唇ヘルペスは疲れているときや体調の悪い時に出やすいですよね。
性器ヘルペスも似たようなもので、一般に無症状が多いのですが、疲れている時などに発症しやすくなります。男性の症状は2~10日の潜伏期の後発症し、性器のかゆみや小さな水泡が生じます。それが破れると潰瘍(かいよう)となり、排尿時に痛みがあります。性器ヘルペスはオーラルセックスによっても感染し、口唇ヘルペスと同じく再発することもあります。
クラミジアもヘルペスも最近はオーラルセックスによる口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)などへの感染が目立っています。口腔や咽頭粘膜は傷がつきやすいため、感染が容易なのです。とにかく重要なのは、不特定多数のパートナーを持たず、性行為時にはコンドームをつけることです。