【新型インフルエンザ】新型インフル発生時 全国民分ワクチン、半年で製造へ
感染力の強い新型インフルエンザの大流行時に、半年ほどで全国民分のワクチンを製造する自給体制が今年度中に整う見通しになった。鳥などが持つインフルエンザウイルスが遺伝子変異を起こして出現する新型インフルは大半の人に免疫がなく、流行すれば多数の死者が出ると懸念されている。政府が1千億円以上かけて対策を進めてきた。
新型インフルをめぐっては2003年以降、東南アジアを中心に鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が続発したため、政府が対策を検討してきた。政府の行動計画は、全人口の25%がかかると最大で約2500万人が受診、死者は64万人と推計する。新型インフル発生後にそのウイルス株を入手して、全国民分のワクチンを半年で自給する準備を10年に開始。12年には緊急事態を想定した特別措置法を制定した。
鶏卵でウイルスを培養する従来法では1年半以上かかるため、政府は1千億円超を製薬企業に支援。細胞培養法という速く製造できる新技術を導入させ、新工場の整備などをした。厚生労働省によると、今年度内に武田薬品工業、化学及血清療法研究所、北里第一三共ワクチンの3者の工場で計1億3千万人分が生産できるようになる。新型インフル発生時には、行動計画に基づき、3者が速やかに製造を始める。発生から約4カ月後以降に出荷できる見通しという。当初は13年度中の達成を目指していたが、阪大微生物病研究会が撤退するなどして大幅に遅れていた。
感染症に詳しい岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「ワクチンを国内で自給できる国は世界でも少なく、国家の危機管理上で重要なこと」としたうえで「混乱を起こさないため、流行時の接種方法や流通体制を詰めておく必要がある」と話す。
一方、現在取り組むワクチン備蓄事業については、見直し議論を始めた。新型インフルのワクチンができるまでの間に合わせに、新型インフルになりそうな鳥インフルのウイルス株を使って1千万人分を備蓄しているが、来年度以降はその意義が薄れる。そもそも将来出現する新型インフルに効くかどうかわからないためだ。来年度に有効期限が切れる900万人分は、H5N1株から、13年以降に中国で人への感染が起きているH7N9株に変更する予定だ。
https://digital.asahi.com/articles/ASL6720SWL67UBQU001.html…