2021/03/08【新型コロナウイルス:COVID-19】変異株検査は新規感染者の約1割

イギリスなど海外で広がる変異した新型コロナウイルスは、国内でどこまで検査されているのか。
埼玉県は、8日、県内に住む10歳未満から70歳代までの男女20人が、ブラジルやイギリスなどで感染が広がる、変異した新型コロナウイルスに感染していたことを確認したと発表しました。
このうち、10歳未満から70歳代までの男女18人は、今月5日に感染が確認されたと発表された10歳未満の女の子の関係者で、女の子の家族や、その職場の同僚や家族、それに、同僚の子どもが通う施設の関係者だということです。
県によりますと、18人は10歳未満の女の子と同じ、ブラジルで感染が広がる変異ウイルスに感染しているとみられるということです。
また、このほか、10代の男性は、すでにイギリスで感染が広がる変異ウイルスへの感染が確認されている50代の男性の家族で、40代の男性は海外への渡航歴があるということです。
20人のうち、4人は症状はなく、ほかの16人は先月中旬から今月上旬にかけて発症し、このうち2人が重症だということです。
埼玉県内で変異ウイルスへの感染が確認されたのは、これで60人となりました。
埼玉県は感染が確認された20人の濃厚接触者の検査を進め、感染が広がっていないか調べています。
埼玉県は「非常に多い件数が確認されているので、これまで以上に監視体制を強めるなど、適切な処置をとって、感染拡大を防ぎたい」としています。
緊急事態宣言が延長された首都圏の1都3県で、先月末までの1週間に400人余りに変異ウイルスの検査が行われたことが分かりました。
これは、この期間に発表された新規感染者の1割ほどの数で、専門家は「検査などの監視体制をさらに強化すべきだ」と指摘しています。
海外で猛威をふるう変異ウイルスは、これまでより感染力が強いと考えられていて、今後の国内の感染状況を大きく左右するとも言われています。
国内では今月5日までに、空港の検疫を除いて全国20の都府県で合わせて194人から変異ウイルスが検出されています。
しかし、変異ウイルスの検査はすべての感染者に対して行われているわけではなく、自治体が一部の人を抽出して行っているため、感染者をすべて見つけられていない可能性があります。
今回、NHKは緊急事態宣言が延長された東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県を対象に、変異ウイルスの検査がどれくらい行われたのかを調査しました。
その結果、1都3県全体では、先月28日までの1週間に合わせて418人に、変異ウイルスの検査が実施されていたことが分かりました。
これは、この期間に発表された新規感染者4266人の1割ほどの数となります。
ただ、実際は、変異ウイルスの検査は感染が確認されてからしばらくたって実施されることもあり、この期間の検査率を示す数字ではありません。
都県別では、
▽東京は149人を検査し、変異ウイルスが確認された人はいませんでした。
▽神奈川は43人を検査し、最終的な結果はまだ出ていません。
▽埼玉は44人を検査し、変異ウイルスが確認された人はいませんでした。
▽千葉は182人を検査し、このうち1人が変異ウイルスに感染していることがわかりました。
国は自治体に対して、新規感染者の5%から10%を目安に検体を抽出して調べるよう求めています。
変異ウイルスの検査について、自治体からは、まだ体制を整えている途中であることに加えて、そもそも検体が保存されていなかったり収集できていなかったりするケースや、確定検査ができるほどウイルスの遺伝子の量が十分でない検体もあることなどが課題にあがっています。
一方で、いずれの地域も、今後、変異ウイルスの検査体制を強化したいとしています。
感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「実際の感染状況を把握するには、検査数がやや少ないように感じる。ウイルスの広がりを早期に把握して対策にいかすためにも、検査などの監視体制をさらに強化する必要があるのではないか」と指摘しています。
【変異ウイルスの検査体制】
新型コロナウイルスの変異ウイルスはどのような体制で検査しているのか。
まず、自治体が新型コロナの陽性者のうち、一部の人を抽出して原則、地方衛生研究所でPCR検査による分析を行います。
国は自治体に対して全陽性者の5%から10%を目安に検体を抽出して調べるよう求めています。
自治体の検査で変異ウイルスの疑いが出た場合、国立感染症研究所に検体を送ってゲノム解析を行い、結果を確定させてきました。
厚生労働省によりますとこれから順次、自治体の検査だけでも結果を確定していくということです。
変異ウイルスが確認された自治体の中には検体を抽出する割合を増やして、検査を広げるところも出てきています。
【国内での感染拡大経緯は】
変異した新型コロナウイルスは、国内では去年12月に初めて見つかり、それ以降、徐々に感染が拡大しています。
今月5日までに確認された地域は、あわせて20の都府県にのぼっています。
国内で最初に変異ウイルスが確認されたのは去年の12月25日。
イギリスを出て羽田空港や関西空港に到着した5人から検出されました。
その翌日には、東京都で、空港の検疫以外では初めて変異ウイルスが確認されました。
年が明けた1月、6日には兵庫県、18日には静岡県、28日には埼玉県で空港の検疫以外では初めて変異ウイルスが確認されました。
この時期になると、海外に滞在歴が無い、いわゆる市中感染したと見られる人も出てきました。
2月に入ってさらに地域が拡大し、4日には神奈川県、9日には福島県、栃木県、群馬県、茨城県、新潟県、長野県、12日には山梨県と滋賀県、16日には京都府と鹿児島県、18日には岡山県、22日には大阪府で変異ウイルスの検出が初めて報告されました。
職場や保育園などで変異ウイルスによるクラスターが発生したとみられる地域もありました。
3月になっても、3日に千葉県と岐阜県で、5日に石川県で初めて変異ウイルスが確認されました。
関東甲信越では、埼玉県で40人、新潟県で31人、神奈川県で15人、東京都で14人、群馬県で3人、山梨県で2人、茨城県で1人、千葉県で1人、栃木県で1人、長野県で1人、変異ウイルスが確認されています。
全国の感染者を月別に見ると、去年12月は3人、ことし1月は21人だったのに対し、2月は134人と大幅に増加。3月も、5日までにすでに36人となっています。
これ以外に空港の検疫が57人いて、国内全体ではあわせて251人の感染が確認されています。
厚生労働省は国内での変異ウイルスの感染状況について、「クラスターが複数報告され、海外とのつながりのない事例が継続して確認されているが、地域で広く流行している状況ではない」としています。
【関東甲信での検査状況】
1都3県以外の関東・甲信での変異ウイルスの検査状況は以下の通りです。
▽茨城では先月22日から28日までの陽性者174人のうち、変異ウイルスを調べたのは8人で、変異ウイルスが確認された人はいませんでした。
▽栃木では先月22日から3月1日までの陽性者39人のうち、23人を3月1日に調べましたが、確認された人はいませんでした。
▽群馬では先月22日から26日までの5日間で、変異ウイルスを調べたのは9人でした。
▽山梨では先月22日から28日までに、変異ウイルスを調べたのは1人で、確認された人はいませんでした。
▽長野は先月22日から28日までに、変異ウイルスを調べたのは2人で、確認された人はいませんでした。

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