新型コロナウイルスの新規感染者の減少が鈍化し、感染者の集団=クラスターの抑制が課題となるなか、神奈川県看護協会は専門的な知識を持つ看護師を高齢者施設などに派遣して、感染防止のポイントを説明する取り組みを強化しています。
神奈川県看護協会によりますと、県内の高齢者施設や障害者施設はクラスター対策が求められるものの、感染防止策について正確な知識を持つ職員は少ないということです。
このため看護協会は、専門的な知識がある看護師を『感染対策班』として施設に派遣し、ノウハウを伝える取り組みを進めていて、今月5日には横浜市都筑区の介護老人保健施設「都筑ハートフルステーション」を看護師が訪れました。
看護師が施設に入ることで現場の実情にあわせたアドバイスをするのが狙いで、この日はクラスター化を防ぐため、ふだんから入居者をグループに分けてほかのグループとは接触しないように生活してもらうよう、促してしていました。
また、日常生活の介助の中にもリスクが潜んでいるとして、入居者の歯ブラシを洗う際にゴム手袋をしていても直接ブラシ部分には触れずに洗浄するよう求めていました。
施設側からは入居者が感染した場合の対応について質問が出され、感染した人と接した際の防護服の着脱はその部屋の中で行い、そのまま外に出ないことや、室内の空気を効率よく換気するには窓際に扇風機を外側に向けて設置することなどが重要だと説明していました。
また、すでに導入されていた、デイケアの利用者向けの部屋のアクリル板の設置方法や、取引業者など外部から出入りする人の発熱や体調の記録の付け方などが適切かどうかも確認していました。
勝部康弘施設長は「ふだんから感染者を出さないよう気をつけたり、もしもの時に備えて準備をしたりしていますが、正しい知識でアドバイスをしてもらえると、不安が解消され、シュミレーションができて非常にありがたいです」と話していました。
【介護・福祉施設で相次ぐクラスター】
神奈川県でもクラスターの発生があとを絶ちません。
神奈川県によりますと、先月1か月間に新たなクラスターが確認された52施設のうち、6割近い30施設が高齢者施設や障害者施設など介護・福祉関連の施設だということです。
また、ことし1月の1か月間には106の施設で新たなクラスターが確認されましたが、このうち64施設が介護・福祉関連でした。
新型コロナウイルスの感染が広がり始めた去年から今月2日までを通して見ても、県内で確認されたクラスターのべ355件のうち、158件が介護・福祉分野の施設で起きたということです。
このため神奈川県は、高齢者や障害者向けの入居型の施設で働く職員を対象に感染の有無を調べる検査を進めるなど、こうした施設でのクラスターの発生を食い止める対策を強化しています。
【施設で働く人の電話相談にも対応】
神奈川県看護協会では、新型コロナウイルスについて高齢者施設や障害者施設で働く人からの相談に幅広く応じようと、電話での相談窓口も設けています。
応対するのは感染対策の専門知識を持つ看護師で、これまでにのべ88件の相談が寄せられたということです。
相談は、今も品薄状態が続く、医療用の「N95」と呼ばれるマスクを使い回す際、一度使ったマスクをどう保管するのが適切かといった質問や、入浴や食事の介助の際に感染を防ぐためには、マスクやフェイスシールド、それに防護服などをどの程度、身につければいいかといった質問が多いということです。
また、最新の情報についての問い合わせも目立つということで、ドラッグストアで販売されている新型コロナの簡易の抗原検査キットの精度や、マスクを2重に着けることの効果を尋ねる問い合わせもあるということです。
高齢者施設や障害者施設では、職員が感染症対策の専門知識を学ぶ機会が少ないのが実情で、神奈川県看護協会はこうした相談窓口を設けた狙いについて、働いている人がどこに相談していいのかわからないままため込んでいる不安を解消するためだとしています。
神奈川県看護協会の渡邉二治子専務理事は「施設で働く人たちは、わからないが故に不安が募って独自の対策をしてしまいがちだが、正しい知識で正しい対策を取ることが大事です」と強調しています。
そのうえで「感染症対策は予防的な対策が欠かせないので、継続していけるよう看護協会としても支援したい」と話しています。