新型コロナウイルス対応についてNHKが全国の知事にアンケートを行ったところ、国と地方自治体の間で役割分担や責任の所在があいまいだなどと課題を指摘する声が相次ぎました。
NHKは、2回目の緊急事態宣言が出されたあとの1月、全国の知事を対象に書面によるアンケートを行い、すべての都道府県から回答を得ました。
それによりますと、新型コロナウイルスの対応で国と都道府県の役割分担が全体として適切に行われているか聞いたところ、
▽「適切だ」が5人、
▽「どちらかといえば適切だ」が33人、
▽「どちらかといえば適切でない」が6人、
▽「適切でない」が1人でした。
財政的な支援や専門的な知見の提供が行われたなどとして「どちらかといえば」も合わせ、8割の知事が「適切だ」と回答しました。
ただ、こうした知事の多くからも、国との関係について課題の指摘が相次ぎました。
▽愛媛県の中村知事は「当初は、緊急事態宣言の発出、春の一斉休校、さまざまな経済政策などの実施に際して、情報が都道府県側に届かないまま、唐突な対応を求められることも多く、情報共有や役割分担に混乱が見られた」としています。
▽山形県の吉村知事は、休業要請に国との事前協議が必要とされていることについて「実情に応じたスピーディーな対応がしづらい」と指摘しました。
また、▽静岡県の川勝知事は「Go Toキャンペーン」について「一時停止などの判断については都道府県任せとせず、国の事業として責任を持って対応するべき」などとしています。
さらに、「どちらかといえば適切でない」と答えた▽広島県の湯崎知事も、今回の緊急事態宣言について「結果的には自治体からの要請を国が追認する形となっており、情報集約や対策の実施を迅速に行えるよう国と自治体の権限・役割の見直しが必要だ」と指摘しています。
▽大阪府の吉村知事は「緊急事態宣言発出の権限は国にある一方、休業要請の権限は知事にあり、国・都道府県のどちらに責任があるのか不明瞭だ。宣言の権限は地域の状況をもっとも把握している都道府県へ移し、知事が責任をもって、発出できるようにすべき」と提案しています。
アンケートではさらに、今後の地方分権の在り方について尋ねました。
▽新潟県の花角知事は「新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、東京一極集中を是正し、地方分散を促す必要がさらに高まっている」としています。
▽三重県の鈴木知事は「『国の政策決定プロセスへの地方の参画』をさらに充実させていく必要がある」と指摘しました。
こうした結果について、鳥取県知事も務めた片山善博元総務大臣は「感染対策は国と都道府県の共同作業だが、国は大枠を決め、あとは財政的な面倒を見る。具体的な対策は都道府県が打っていくというように役割分担すべきだ」と指摘しています。
また、政治学が専門の東京大学の御厨貴名誉教授は「新型コロナウイルスを1つのてこにして、これまでダメだった国と地方の動きを全面的に変えて、新しいコロナ後のビジョンというものに結び付けていかなければならない。これまでの行政が消極的だったとしたら、積極的に攻めの行政を都道府県知事はやっていかなくてはならない。地方が真剣なら国も受け止めるはずだ」と指摘しています。