緊急事態宣言が延長されると、営業の自粛を続ける飲食店などには賃料の問題がさらに重くのしかかるおそれがあります。法律や契約では想定されていなかった事態で、日弁連の相談窓口には賃料をめぐる相談が相次いでいて、専門家は借り主と貸主が積極的に協議することが重要だとしています。
日弁連=日本弁護士連合会によりますと、先月20日から新型コロナウイルスに関する相談窓口を設けたところ、最初の5日間におよそ500件にのぼる申し込みがあり、事業者からの相談で最も多いのが賃料をめぐる相談だということです。
感染拡大を防ぐための営業の自粛を理由に、借り主が賃料の減額や猶予を要請した場合、法律上どのように判断されるのでしょうか。
不動産取り引きなどに詳しい奥国範弁護士は、従来の賃貸借契約では新型ウイルスのまん延や自粛要請といった未曽有の事態が想定されていないうえ、今の民法などの法律でも明快な解決策はなかなか見当たらないと指摘しています。
奥弁護士は「貸主と借り主とで結ぶ賃貸借契約では、天変地異や不可抗力の事態が起きたときに、『協議しましょう』とする程度の条項はあったとしても、今回のような事態を想定して明確な対処を盛り込んでいるケースはほぼ考えられない」と話しています。
賃料の問題をめぐっては、国会で支援策が議論されているほか、自治体で支援に乗り出したところもあります。
また大手の商業施設では、貸主が賃料の減額を決める動きも出ています。
奥弁護士はこれまでの賃貸借契約や現状の法律に縛られて契約内容の見直しを行わなければ、貸主と借り主が共倒れになってしまうと懸念しています。
奥弁護士は「貸主の立場で考えると、賃料の減少という事態は想定していなかったと思う。しかし賃貸借契約で決まっているとして、賃料の減額や猶予をせずに求め続けると、借り主の手元の資金がなくなったり、倒産したりして、賃料が一切入ってこなくなる事態になりかねない」と指摘しています。
奥弁護士は双方の利益のためにも、賃料の減免や猶予について協議すべきだとしたうえで、「借り主は減額や猶予の交渉に向けて、まずは売り上げや客足の減少幅が客観的にわかるデータをそろえたり、当面、半年程度を目安に将来の資金繰りを把握したりする作業をしてほしい。諦めずに弁護士などの専門家にも助けを求めてほしい」と話しています。
洋食店経営の男性「どうにかしないとつぶれる」
岡山市で洋食店を経営する男性は、店の収入が大幅に減少しているのに賃料などの支払いが続き、経営上の大きな負担になっていると訴えています。
男性は「せめて賃料3か月分をどうにかしないとつぶれます。知り合いから借りて、つなぎだけでもどうにかしなければいけない」と話しています。
日弁連の相談窓口
日弁連では新型コロナウイルスの感染拡大に関して、個人や事業者からさまざまな法律相談を受け付ける全国一律の窓口を設けています。
相談の申し込みを受け付けたうえで、相談内容に応じてそれぞれの地域の担当の弁護士から連絡するということです。
相談の申し込みは、日弁連のホームページで受け付けているほか、電話では平日の正午から午後2時まで、0570-073-567で受け付けています。