2020/05/11【新型コロナウイルス:COVID-19】飼い主感染…ペットどうする 業界団体は預かり「お断り」 保険会社が救済乗り出す
自分が感染した場合、ペットを預かってもらえないか-。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、こうした飼い主からの相談が各地の動物愛護団体やペットホテルに相次いでいる。ただ、海外ではペットが感染した事例もあり、預かりに応じる施設はほとんどない。そんな中、ペット保険大手が感染者の犬猫を無償で預かると発表し、飼い主から注目されている。
「発熱し、コロナかもしれない。隔離された時は猫の預かりを頼めないか」。群馬県の愛護団体に三月、県内の高齢女性からこんな内容のメールが届いた。女性は十七歳の猫と暮らしており、身内はいないという。
結局、女性の熱は数日で下がり、具体的な話には進まなかった。相談を受けた愛護団体ではこの一件を受け「新型コロナは動物への感染など未知の部分が多く、リスクが大きすぎる」と、預かりはしないと決めた。
ペット向けのサロンやホテル約七百店が加盟する日本ペットサロン協会も、感染者のペットは極力預からない方針だ。東京都獣医師会は、飼い主が感染して自宅で世話ができない場合、なるべく早く預ける方が良いとしているが、こうした事情もあり「預け先がない」と悩む飼い主は少なくない。
四歳のダルメシアンと暮らす東京都中央区の建築士大川三枝子さん(47)もその一人。夫婦二人暮らしで、片方が感染すればもう一方も隔離生活になる可能性が高い。だが、体重三〇キロ、立ち上がれば体長一メートル超の大型犬を預けるのは難しい。
「人一倍予防に気をつけ、緊急時に助け合えるよう友人とも連携を取っている。それでも、犬が取り残されることへの心配は拭えない」
こうした飼い主の不安を解消しようと、ペット保険大手「アニコム損害保険」は四月、新型コロナに感染した飼い主が入院や隔離生活を送る間、専用施設でペットを預かるプロジェクト「ステイアニコム」を打ち出した。
同社によると、ペット保険加入の有無は問わず、事前登録も不要。飼い主や家族の感染確定後、ホームページの専用フォームから申し込む。犬と猫が対象で、預かり中は同社の獣医師や社員有志が無償で世話をする。五月八日時点で犬二匹を預かっているという。
同社の担当者は「確保した施設は十匹程度が限度だが、協力の申し出も多くいただいている。取り組みを広げられるよう、まずはノウハウを蓄積したい」と話した。
<動物の新型コロナ感染> ペットが新型コロナウイルスに感染するケースはまれだが、海外では飼い主から犬、猫への感染事例がある。3月にベルギーで飼い主から感染した猫には、一時的に呼吸困難の症状も見られた。米・ニューヨークの動物園では、トラへの感染も確認されている。