【研究報告】「湯の花」効能学生が実証、別府大生表彰…アトピー緩和可能性
大分県別府市の明礬みょうばん温泉地区で、国指定重要無形民俗文化財の製法で作られている「湯の花」について、地元の別府大の学生たちが「アトピー性皮膚炎の症状を緩和させる可能性がある」との研究結果をまとめた。この研究は、3月に開かれた文部科学省主催の研究発表大会「サイエンス・インカレ」で表彰され、学生らは「地域の資源が注目されるきっかけになり、製造技術の継承につながれば」と期待している。
湯の花は、温泉の成分を用いた天然の入浴剤。同地区では江戸時代から、わらぶきの「湯の花小屋」の中で、敷き詰めた青粘土に温泉の蒸気を通し、湯の花の結晶を作る独自の製法が受け継がれている。一般の入浴剤の普及で生産量が減少し、別府市教委によると、最盛期には約250棟あった湯の花小屋は約20棟まで減った。
これまで別府温泉はアトピー性皮膚炎にも効くと言われていたが、湯の花の効能を科学的に調べた例はなく、同大食物栄養科学部の仙波和代教授(感染免疫学)の研究室に所属する女子学生5人は、2016年春から研究に着手。アトピー性皮膚炎の男女8人に約1か月間、湯の花を混ぜた保湿クリームを患部に塗ってもらったところ、全員が症状が改善したと答えた。
さらに、湯の花の成分が皮膚の免疫細胞まで浸透することで、アトピー性皮膚炎の原因となる黄色ブドウ球菌への抵抗性を向上させる可能性があることを確認。仙波教授によると、湯の花に含まれる鉄とアルミニウムの硫酸化合物「ハロトリカイト」に抗菌作用があると考えられるという。
学生らと共同で研究した大分市の化粧品メーカー「ゆふ・は」は、湯の花を製造する同地区の旅館「岡本屋」などと連携して、16年秋に湯の花の成分を配合したせっけんとクリームを発売した。
温泉を病気予防に役立てる研究をしている九州大別府病院の前田豊樹准教授は「質の高い研究で、アトピー性皮膚炎の治療薬の開発も期待できる」と評価している。
http://www.yomiuri.co.jp/kyus…/news/20180517-OYS1T50038.html