【研究報告】ジカ熱治療や種子の保存期間延長 日本発、注目の薬や新技術が次々と
ブラジルでのオリンピック直前に大流行し、世界的に話題になった蚊から感染するウイルス病・ジカ熱の有望な治療薬候補を大分大学グループが発見、また、種子の保存期間を延長する技術を国立研究開発法人・産業技術総合研究所(産総研)グループが開発した。
いずれも同法人・科学技術振興機構が主催する新技術説明会で発表したもので、実用化をめざして共同開発できる企業を求めている。
C型肝炎ウイルス薬に着目
大分大学医学部の小林隆志教授 (感染予防医学) らが2017年 7月25日に発表したのはC型肝炎治療薬ビバビリン。ジカ熱は大人には発熱、痛みの風邪症状だが、妊婦が感染すると先天異常・小頭症の赤ちゃんが高率で生まれる。15年に 100万人前後が感染したブラジルでは2400人の小頭症新生児が生まれ、うち29人が死亡した。アフリカから南米、さらには米国へと流行が広がっている。
早急に治療薬が必要と考えた小林教授らは有効な既存薬がないかと考えた。同じフラビウイルス科のC型肝炎ウイルス薬に着目、培養細胞実験でリバビリンがジカウイルスのウイルスの増殖を抑え、培養細胞の死亡を防ぐことを確認した。ジカウイルスは普通のマウスに感染しないが、特殊な高感受性系統のマウスを見つけ、それをモデル動物としてリバビリンに延命効果があることも確認した。実用化には人での効果確認が必要だ。
一方、産総研の大島良美研究員 (生命工学領域生物プロセス研究部門) らは 7月13日、遺伝子操作で植物種子の保存期間を延長するのに成功したと発表した。種子の発芽能力は数百年から短期間まで大差があるが、大島研究員らは種子表面を保護している膜たんぱく (クチクラワックス) が主因と突き止めた。組み換え遺伝子でクチクラを増やせば、保存期間を大幅に延ばせるうえ発芽率も高まることを証明した。遺伝子組み換え作物への理解が必要だが、大豆など短命種子の改良などが可能になる。
https://www.j-cast.com/2017/08/01304363.html