2017/09/10【研究報告】パンデミック発生そのとき 緊急事態宣言下で起こること
【研究報告】パンデミック発生そのとき 緊急事態宣言下で起こること
科学の扉
【20××年、東アジアで鳥インフルエンザウイルスが変異し、人から人に感染する新型ウイルスが生まれた。航空便を利用した人から国内にウイルスが持ち込まれ、感染が拡大。政府は備蓄したワクチンの緊急接種を始めたが、想定していた型ではなく、数千万人が感染した。首相は緊急事態を宣言し、知事が外出自粛を要請。学校は閉鎖され、交通機関はストップ――。専門家は、感染症の世界的流行「パンデミック」が近い将来に起こりうると指摘する。】
■日本の想定、国内死者は最悪64万人
20世紀中に起きたパンデミックは3回あり、すべてインフルエンザだった。世界で2千万人以上が死亡したとされるスペイン風邪(1918~19年)も、元々は鳥インフルエンザウイルスが起源とされている。
パンデミックが起きれば交通網が止まり、医療機関は患者であふれる。世界銀行は、スペイン風邪のような深刻なパンデミックが起きた際の損失を世界のGDPの約5%にあたる4兆ドルと試算している。国の想定では最悪の場合、国内の患者数が2500万人、死者を64万人と推計。米政府は今年6月に発表した想定で、死者は最悪で193万人に上ると予測している。
現在警戒されているウイルスは、2013年3月に中国で人への感染が初めて報告された「H7N9」だ。もともと低病原性の鳥インフルエンザで、人には感染しにくいと考えられていたが、昨年から報告が増えている。世界保健機関(WHO)によると、今年7月現在で約1500人が感染し、少なくとも約600人が死亡した。