群馬大と国立感染症研究所の研究グループは9日、体内に特定の寄生虫がいると、脂肪が燃焼して痩せやすい体になることを、世界で初めて証明したと発表した。寄生虫によるダイエット効果はこれまで俗説的に語られてきたが、科学的な根拠は明らかでなかった。「さらに研究を進めれば、新たなダイエットサプリなどを開発できる可能性がある」としている。
◎特定の細菌増やし代謝高める
グループはあらかじめ餌を多く与えて太らせたマウスで実験。腸管寄生虫を感染させると、体重の増加が抑えられ、血中の中性脂肪も低下することを発見した。そのまま太り続けた通常のマウスと比べ、28日間で2割も体重差が出た。
寄生虫の有無で食べる量に差はなかったため、エネルギー代謝が上がったと予測。詳しく分析すると、寄生虫はマウスの腸内にすむ特定の細菌を増やすことが分かった。この細菌が作用して、脂肪細胞内で代謝を高める遺伝子が多く現れることが分かったという。
寄生虫に感染してもマウスの健康に悪影響はなかった。
研究に当たった群馬大大学院医学系研究科の下川周子助教は「寄生虫が分泌するどの物質が作用して、宿主が痩せやすくなるのかを突き止めたい。人間のダイエットサプリや薬として実用化できる可能性がある」としている。
研究成果は同日、米国の科学雑誌「インフェクション・アンド・イミュニティー」(電子版)に掲載された。