【研究報告】血液1滴で敗血症を迅速に診断、最新検査法 米研究
敗血症の迅速で安価な検査法を開発したとの研究論文が19日、発表された。敗血症は制御不能に陥った免疫系から体が攻撃される病気で、生命を脅かす恐れがある。
米マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の臨床試験では、親指大のろ過機器を使って血液1滴を分析し、敗血症患者を数時間以内に95%の精度で検出できた。
現在、敗血症の検査では結果が出るまでに数日間を必要とする機器が用いられており、その診断結果も3分の1近くが正確ではないとされる。敗血症をめぐっては、診断が1時間遅れるごとに死亡率が約8%増加することが、過去の研究で示されていた。
英科学誌「ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング(Nature Biomedical Engineering)」に掲載された論文の共同執筆者で、マサチューセッツ総合病院の集中治療室長を務めるジャロン・リー(Jarone Lee)氏は「この検査法により、敗血症を発症する恐れのある患者を他のどの方法よりも早く特定できる可能性があると考えている」と語る。
敗血症は人体の免疫系が重大な感染症に反応して制御不能に陥る場合に発症し、体温低下や嘔吐(おうと)などの症状がみられる。極めて深刻な場合は組織損傷、臓器不全や死を引き起こす。
米医学誌「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に掲載された最近の論文によると、世界では毎年3000万人が敗血症を発症し、500万人が死亡しているという。
今回の研究で開発されたのは「好中球」と呼ばれる特定の種類の白血球を分離する検査法だ。
論文の主執筆者で、マサチューセッツ総合病院の外科医で米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のダニエル・イリミア(Daniel Irimia)助教は先行研究で、この種の白血球の自発運動が、患者が敗血症を発症する確率に対応していることに気づいた。
そこで、イリミア助教と研究チームは、微小な迷路を通るように好中球を誘導する小型携帯機器を開発した。
イリミア助教は、この機器の「特筆すべき性能」により「敗血症発症時に好中球が果たす根本的な役割が明確になる」との考えを明らかにしている。現在、ボランティア被験者群の規模と多様性を拡大した追跡検査が進行中だ。