【結核】いまも世界で年間170万人が死亡している 日本が主導し、結核終息戦略の実現を
2018年3月24日は世界保健機関(WHO)が制定した「世界結核デー」だった。結核は日本では少なくなっているが、世界的には「三大感染症」で、年に170万人 (2016年) と、依然としてエイズ、マラリアを上回る死者を出している。
専門家の目から見た結核終息をめざす内外の動きを報告すると――。
10%はエイズとの二重感染者
公益法人・ストップ結核パートナーシップ日本の代表理事を務める森亨・結核研究所名誉所長は、2035年の目標年には、結核の罹患率を2015年の10分の 1に、死亡率を20分の 1に減らすとのWHOの結核終息戦略を解説した。2016年は1040万人 (男性620 万人、女性320 万人、子ども100 万人) が新たに罹患した。その10%はエイズとの二重感染者。インド、インドネシア、中国など 7カ国で64%を占めた。
薬の進歩で治療成功率は 8割にもなり、2000年から2016年まで5300万人が救命できた。残る課題は薬剤耐性結核だ。診断や治療などさらなる対策や研究には多額の費用がかかるため、森氏は政治的な関与の必要性を強調した。
加藤誠也・結核研究所長は、世界の結核終息戦略には、日本の経験や技術協力が必要だと指摘した。日本は結核予防法に基づき、官民挙げての努力で短期間に罹患率を減少させた。定期検診、届出制度、保健所での患者管理、GCGG接種や予防内服など、多くは公費負担による徹底した対策だ。
日本で開発された医療技術も一役買っている。多剤耐性結核治療薬デラマニド(大塚製薬)、迅速診断法のLAMP法(栄研化学)、迅速感受性検査ラインプローブ法(ニプロ)などだ。目標の終息戦略完遂は決して容易ではないが、WHOはさまざまなレベルの国際会議や実践活動を計画しており、日本の協力が求められているという。
世界結核デーは、細菌学者ロベルト・コッホ博士が結核菌の発見を発表した1882年のこの日にちなみ、1997年にWHOが制定した。