【耐性菌】国産鶏肉の59%から耐性菌検出 高齢者が感染すると死亡も
毎年、推定8500人の日本人が薬剤耐性菌で死んでいるという。そのうえ、悪夢の耐性菌といわれ、どんな抗生物質も効かなくなるカルバペネム耐性腸内細菌による死者も2ケタにのぼっていることもわかった。
耐性菌といえば、医療機関で安易に抗生物質をもらうのはいいが、中途半端に飲んだために腸内細菌などが耐性化するといわれてきた。これはきちんと飲み切ることで耐性化を防ぐこともできる。ところが、私たちが普段食べている鶏肉に抗生物質が効かない耐性菌が付着していて感染している……。こんな背筋が寒くなるようなデータが、厚生労働省研究班の調査で明らかになった。
それによると、2015年度から17年度の3年間に、国内3カ所の食肉検査所で集めた鶏肉と、ブラジルなど5カ国から輸入された鶏肉約550検体を検査したら、全体の49%から「ESBL産生菌」か「AmpC産生菌」という耐性菌を検出したという。
耐性菌による汚染の割合は、国産鶏肉が59%に対し、輸入鶏肉は34%だった。これらの耐性菌は鶏肉の内部ではなく、表面に付着しているそうだ。ちなみに、耐性菌は腸管にいるのになぜ表面に付着しているのかというと、機械で鶏を処理するときに腸管を傷つけてしまうからである。
難しい専門用語が出てくるので簡単に説明しておきたい。「ESBL産生菌」というのは、日本で主に使われる抗生物質のペニシリン系、セフェム系といった抗菌薬を分解する酵素を出して無効にしてしまう耐性菌だ。この耐性菌があると膀胱炎、尿道炎、呼吸器感染症、皮膚感染症などが治らないこともある。
「AmpC産生菌」は、抗生物質に触れて菌の量が多くなると、日本で多く使われる最新の抗生物質(第3世代セフェム系)に耐性を持つ厄介な耐性菌だ。
もっとも、これらの耐性菌に感染しても健康な人なら問題はないが、免疫力が落ちた高齢者や、たとえば糖尿病などの生活習慣病があると、簡単に治る病気でも重篤になる可能性もある。実際に私の身近にも、肺膿瘍になったが耐性菌があったために抗生物質が効かず、助からなかった高齢の女性がいた。また妊産婦がこれら耐性菌に感染していたら、生まれる赤ちゃんが重症化することがよくあるそうだ。
こんな耐性菌に、私たちは日常的に食べる鶏肉からも感染しているというのである。
鶏肉は食べる前に加熱するから大丈夫という声もある。果たしてそうだろうか。たとえば「交差汚染」といって、生の鶏肉に触った手を、簡単に水洗いしただけで野菜などを触ることはよくある。あるいは、鶏肉を切ったまな板を消毒しないでレタスやトマトなどを切ることもある。こういった調理法で、簡単に鶏肉の耐性菌に感染してしまうのである。
耐性菌は鶏の糞に含まれるから、鶏糞も怖い。鶏糞は畑の肥料としてよく使われるが、十分に発酵させたものならともかく、そうでなければ鶏糞に耐性菌が含まれているはずである。それが畑にまかれ、野菜に付着する。知らずに生で食べれば口に入ることは十分に考えられるだろう。