【薬剤の副作用】新薬「ソリリス」副作用で妻死亡 夫が京大病院提訴へ /京都
京都大医学部付属病院(京都市左京区)で重い副作用がある薬の情報が共有されず、副作用で妻=当時(29)=が死亡したとして、中京区の夫(36)らが近く、京大や主治医を相手取り、1億8750万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴することが、9日分かった。原告によると、新薬「ソリリス」による死亡例は国内初という。
訴状によると、女性は、難病指定されている血液疾患「発作性夜間ヘモグロビン尿症」のため、2011年から、京大病院血液内科で治療を受けていた。16年4月、妊娠に伴い血栓症予防のため新薬「ソリリス」の投与を開始。同病院で8月1日に長男を出産後も通院していた。
同月22日、薬剤投与後に自宅で急激な発熱に見舞われた。京大病院の産科に連絡したが、対応した助産師は「乳腺炎と考えられる」とし、自宅安静を指示。しかし容体は悪化し、同病院に搬送されたが、翌23日に髄膜炎菌敗血症で死亡した。
ソリリスの添付文書には、重大な副作用として「髄膜炎菌感染症を誘発する」と記載されており、海外の死亡例を踏まえ、発熱や頭痛の際は抗菌剤の投与を求めている。
夫側は、京大病院産科は電子カルテなどから投与された薬品の情報を得ていたにもかかわらず、感染症治療が行われなかったとし、「発熱の初期段階で髄膜炎菌感染症を疑い、抗菌剤による治療をすべきだった」と主張している。
京大病院の事故調査委員会の報告書では「合併症や高熱から助産師が対応できる範囲を超えている可能性があり、医師の診断が必要だった」とした上で、「発熱時は抗菌薬を投与する必要があることを院内の医療者に広く認識してもらう工夫が必要」と指摘した。
京大側は、今年5月の京都地裁の調停で「患者が重大な副作用情報を医師に知らせるべきで、医師は他の医師に対してまで周知する義務はない」としていた。