【衛生管理】ジムや温泉に置いてある石けん、使うの平気?
Q:ジムなど共用の施設に置いてある固形石けんを使って、細菌に感染することはないのでしょうか?
A:心配ありません。固形石けんが媒介した細菌で病気にかかることはありません。
ご質問に対する、これまで行われた最も過酷な実験は、1965年に結果が報告された研究で行われました。この実験では、科学者自らが被験者となり、自分の手に約50億個の細菌を付着させました。使用された細菌は、黄色ブドウ球菌や大腸菌などの病原菌であり、まさに体を張った実験でした。
まず、科学者が細菌で汚染された手を固形石けんで洗い、次に別の人が同じ石けんで手を洗いました。手洗い後、2番目の人の手には細菌の感染が検知されませんでした。科学者は「極端な使用条件(利用回数が頻繁、水の切れないソープディッシュ上で石けんが濡れたまま放置される等)であったとしても、固形石けんの表面に発生する可能性のある細菌数では健康上のリスクは発生しない」という研究結果をまとめました。
あなどれない「石けんで手洗い」の殺菌力
この調査結果は、1988年に、石けんメーカーの依頼を受けた科学者によって検証されました。この実験では、16人の被験者に、あらかじめ大腸菌とシュードモナス属の菌を接種しておいた固形石けんで、手を洗ってもらいました。手洗い後の測定で、手に検出可能レベルの細菌が付着している人は1人もいませんでした。科学者らは、「使用後の固形石けんで通常通りの手洗いにより、健康上のリスクはほとんど生じない」と結論付けました。
それ以降、類似の実験が不定期に行われ、なかには細菌を検出したとする研究報告も出ていますが、「固形石けんが感染源」であると証明した研究はゼロです。逆に、最近の研究でもやはり、エボラ熱のような重度のウィルス性感染症の流行時であっても、普通の固形石けんで手洗いするだけで感染を防ぐことができることが証明されています。
リスクは「この石けん、汚れてるかも」という思い込み
では、液体石けんには固形石けんよりも優れた殺菌効果があるのでしょうか。1980年代から、対立する利害関係にある企業の依頼を受けた科学者らが、固形石けんと液体石けんのどちらが洗浄力が高いかについて議論を戦わせるようになりました。論争の多くは、固形石けんの表面と、リキッドソープのボトルのどちらに細菌がより多く確認されたかを中心に展開されました。でも、私たちが知りたいのは、細菌が検出されたか否かではありません。問題は、どちらの形状の石けんを使ったほうが、感染症の発生リスクが高いか、なのです。
米疾病対策センター(CDC)は、感染予防の基本的対策として手洗いを推奨し、固形石けんには液体石けんと「同じ効果」があるとしています。ですから、私たちが犯す可能性のある唯一の間違いはむしろ、誰が使ったかわからない固形石けんは不衛生とか、汚れた石けんで手を洗ってもしかたがないとか、根拠のない恐怖感から、石けんで手を洗わないことでしょう。
https://www.cafeglobe.com/2018/07/nyt_soap.html