【衛生管理】タトゥーに医師免許必要の判決 大阪地裁
皮膚に針を刺して色素を入れ文字や模様を描くいわゆるタトゥーを客に施した行為が医師法違反にあたるかどうかが争われた裁判で、大阪地方裁判所は、「感染症などの被害が出るおそれがあり医師免許が必要だ」と指摘し、彫り師の被告に罰金15万円を言い渡しました。
大阪・吹田市の増田太輝被告(29)は、平成26年7月以降、医師の免許がないのに自宅で女性客3人にタトゥーを施したとして医師法違反の罪に問われました。
検察は罰金30万円を求刑したのに対し、弁護士は、「医師でなければ危険だというわけではなく、医師法に明確な規定がないのに法律を適用するのは誤りで、憲法が保障する職業選択の自由や表現の自由の侵害だ」として無罪を主張していました。
27日の判決で、大阪地方裁判所の長瀬敬昭裁判長は、「タトゥーはいわゆる入れ墨で、細菌感染やアレルギーなど保健衛生上の被害が出るおそれがあることは明らかだ。危険性を理解するには医学の知識や技能が不可欠で、入れ墨の施術は医療行為にあたる」と指摘しました。
そして、「医師法での規制や処罰の範囲があいまいとは言えないし、被害を防ぐために医師免許を求めることは職業選択の自由や表現の自由に反しない」としたうえで、「被告は衛生管理に努め、健康被害もなかった」と述べ、罰金15万円を言い渡しました。
新たな法整備が必要
判決について、元裁判官で福岡高等裁判所の部総括判事などを務めた森野俊彦弁護士は、「直接タトゥーを規制する法律がない以上、裁判所としては医師法に基づいて論理的に判断したといえる。ただ、彫り師の人たちが医師免許を取れるのかや、医師免許を持つ人にタトゥーを施す技術があるのかと考えると、実態にはそぐわないと言わざるをえない。外国のように免許制にするなど何らかの新たな法整備が必要だと思う」と話しています。
被告「非常に残念で納得できない」
増田被告は判決のあと記者会見し、「非常に残念で納得できない。彫り師の仕事を取り戻すため今後も闘っていきたい」と述べ、直ちに控訴したことを明らかにしました。
また、弁護団の主任を務める亀石倫子弁護士は、「裁判所はこちらの主張に何一つ答えてくれなかった。彫り師という少数者の表現の自由をないがしろにする判決を受け入れることはできない」と述べました。
規制めぐる動き
若者の間にタトゥーがファッションとして広がる一方で、国民生活センターなどには平成10年以降、皮膚に針を刺して色素を入れて健康被害を受けたといった相談が相次ぎました。
このため厚生労働省は平成13年、都道府県に通達を出し、「針先に色素を付けながら皮膚の表面に墨などの色素を入れる行為は保健衛生上の危害が生じるおそれがあり、医療行為にあたる」として医師免許が必要だとしました。
通達では、違反者が指導に従わない場合は刑事告発することも視野に警察と連携を図るとしています。
一方で、裁判をきっかけに作られた大阪の彫り師らの団体は、「医師法ではタトゥーの施術を規制する明文の規定はなく、取り締まるのは誤りだ」としたうえで、アメリカなど外国のように安全基準を定めて許可制にするなど、新たな法律を整備すべきだとして、国会議員に陳情を行うなど活動を進めています。
http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20170927/k10011158511000.html