【風邪、乾癬】風邪の季節 急な気温低下と乾燥に注意
高血圧で通院している70代女性が風邪で受診しました。早く治そうと、スチーム吸入器でのどを湿らせたり、ビタミンCの錠剤を飲んだりしているそうです。また、「風邪を悪化させるからお風呂も我慢している」と言います。
冬になると風邪やインフルエンザが流行するのは、気温と湿度が大きく関係しています。
徴兵制度のあるフィンランドで、寒冷地での演習を行う軍隊で風邪やインフルエンザがどのように流行するかを調べた研究が2014年と16年に報告されました。これによると、風邪・インフルエンザとも、3日続けて気温が下がり、空気が乾燥すると感染者が急に増えていました。詳しくみると、気温が1度下がるごとに、インフルエンザは11%、風邪は8%、感染者が増えました。ただ、気温が零下10度以下とあまりに寒過ぎる場合は、どちらも感染者が増えませんでした。
呼吸器感染症は、気温が零度かそれより少し低いときに最も多くなるとされます。インフルエンザも、5度から零下10度での感染が74%を占めることが報告されています。これは、インフルエンザウイルスが零度前後で増殖しやすいことに加え、冷たく乾いた空気を吸い込むことで気道の防御機能が低下し、ウイルスや細菌が侵入しやすい状態になることが関係しているようです。
一方、気温が零下10度を下回ると、風邪やインフルエンザのウイルスの増殖力が弱まります。ただ、気温が常時零下10度を下回るような場所には人間もあまり住んでいないので、ウイルスも広がりようがないともいえます。
風邪やインフルエンザを予防するため、急に冷え込んだ日が続いたときは不必要な外出を避けることが勧められます。空気が乾燥しますので、室内の加湿も忘れずにしましょう。
では、冒頭の女性のように、スチーム吸入器でのどを湿らせると風邪が早く治るのでしょうか? これについて調べた研究がありますが、最近の報告では「風邪を早く治す効果は認められない」ということでした。
女性には、症状を和らげる薬を少しだけ処方しました。ゆっくり休むのが一番で、食事が普通にできればビタミンCなどを錠剤で取る必要はなく、体が冷えないように注意すればお風呂やシャワーも大丈夫と伝えました。先日の受診時、「すぐに良くなったわ」と笑顔で教えてくれました。