【食中毒】同じ料理を食べたのになぜ!? 食中毒に「なる人」「ならない人」のポイント
食中毒が気になる季節を迎えた。例年、この時期には集団食中毒のニュースを見聞きするようになる。しかし、同じものを食べても、食中毒になる人とならない人がいる。何が違うのか、集団食中毒を免れる“秘策”はあるのか。東京都健康安全研究センターの担当者に食中毒回避のポイントを取材した。
O(オー)157などの腸管出血性大腸菌は、初夏から初秋にかけて多発期とされている。腸管出血性大腸菌はもともと牛などの家畜の腸管にすみついている場合があり、加熱が不十分な牛肉をはじめ肉類が感染源になることが多いが、感染した調理者など人を介して汚染された食品なども原因になりやすい。
感染した場合、腹痛や下痢といった症状が出るうえ、名前のとおり腸管から出血して血便が出る。重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳炎といった非常に重い合併症を起こして命に関わることがある。
集団食中毒は、同じ場で同じものを食べた人たちがいっせいに食中毒を起こすこと。飲食店などで発生すると、多くの人が被害にあうことになる。しかし、なかには被害を免れたり、軽症で済んだりする人もいる。
同じ料理を食べたとしても、食べる量が少なければ食中毒のリスクは当然低くなる。東京都健康安全研究センター食品医薬品情報担当課長の小川正氏(薬剤師)は次のような見方である。
「一般に食べる量が少なければ、たくさん食べた人より食中毒になりにくいのは確かでしょう。それ以外に、同じ料理を食べて食中毒になるかならないかのポイントは抵抗力(免疫力)でしょうか。特に乳幼児や高齢者、持病のある人など、抵抗力が弱い人は食中毒が重症化しやすいといわれています」
食中毒のリスクを減らすための、細菌やウイルスへの抵抗力を高めるには、日頃から病気にかかりにくい生活習慣を身につけることが重要である。
食中毒は飲食店などばかりではなく、家庭でも発生する。家庭での食中毒は、被害にあう人が少ないため、ニュースになりづらいが、注意が必要だ。そして、適切な予防の努力も欠かせない。
家庭で食中毒を起こさないための予防策として小川氏がすすめるのは、食中毒の原因となる細菌やウイルスを「つけない・増やさない・やっつける」の3原則である。
原因物質は手を介してうつることが多いため、「つけない」ためには、調理前・トイレ後の十分な手洗いや、調理器具の消毒などが重要である。「増やさない」ためには冷蔵庫・冷凍庫を適切に使い、増殖しない低い温度にしておくこと。「やっつける」は食品の十分な加熱だ。十分な加熱の目安として、腸管出血性大腸菌などの細菌には「75度で1分以上」、ノロウイルスには「85~90度で90秒以上」が推奨されている。