【鳥インフルエンザ】日本も他人事ではない「ヒト感染」 鳥インフルの「気になる」研究結果
香川県さぬき市の養鶏場で、高病原性の鳥インフルエンザウイルスが確認された。
気になるのが、ヒトへの感染の危険性だ。日本ではこれまで報告例がない。ただしウイルス自体の変異が進んでおり、楽観はできない。
香川県でニワトリ9万羽超の殺処分
香川県の2018年1月11~12日の発表によると、養鶏場で検出されたウイルスは「H5亜型」。感染が疑われるニワトリ9万1876羽の殺処分を12日19時30分までに完了した。また日本では、「これまで家きん肉、家きん卵を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染した例は報告されていません」と説明し、根拠のないうわさに惑わされないよう注意喚起した。
厚生労働省によると、鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす。高病原性のウイルスとしては、H5亜型とH7亜型のものが知られている。通常ヒトには感染しないが、感染した鳥に濃厚接触した場合など、まれにうつることがあると同省では説明している。
世界でのヒトへの感染状況は、どうなっているか。国立感染症研究所の17年5月10日時点のデータでは、H5N6ウイルスの感染例が14年5月以降16例あり、いずれも中国だ。H7N9ウイルスについては厚労省が、17年12月現在の世界保健機関(WHO)発表を引用し、13年~17年の間の患者報告数が中国を中心に1565人に達し、うち612人が死亡とある。発生地域は中国、香港、マカオ、台湾で、マレーシアとカナダが「輸入症例」となっている。
03年に最初にヒト感染が確認されたH5N1ウイルスの場合、17年までの症例数はエジプトで359人、インドネシア200人をはじめ東南アジア、中東、アフリカを中心に860人で、うち454人の死亡がWHOより報告されている。
H5N1ウイルスについては国立感染症研究所が「病原微生物検出情報」15年11月号でこんな報告をしている。1996年に中国広東省で初めて確認されて以降、東・東南アジアや欧州、アフリカの国々で流行して、免疫反応を起こさせる抗原の変異が進んだ。また他の亜型の鳥インフルエンザウイルスとの遺伝子再集合が起こり、H5N2、H5N3、H5N6、H5N8などさまざまなH5亜型ウイルスが世界各地で確認され「流行状況は多様化、複雑化している」と報告した。
野鳥から検出されるケースも
鳥インフルエンザウイルスに関して、最近気になる研究成果が発表された。
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究グループが16年12月~17年2月、米ニューヨークで発生した大規模なネコのインフルエンザ流行の原因となった「H7N2」ネコインフルエンザウイルスを調べたもので、東大医科学研究所が17年12月22日に発表した。
このウイルスは1990年代後半から2000年代初め、ニューヨークの鶏市場で発生が報告された低病原性H7N2鳥インフルエンザウイルスに由来するものと分かった。調査の結果、ウイルスはほ乳動物の呼吸器でよく増え、ネコ間では接触感染や飛沫感染することが明らかになった。フェレット同士でも接触感染が確認された。鳥インフルエンザ由来のウイルスがネコの間で保持されていたこととなり、また鳥インフルエンザウイルスがネコを介してヒトを含むほかの動物に伝播する可能性が示された。
前出の国立感染症研究所の報告通り、鳥インフルエンザウイルスについては今も変化が進んでおり、状況は複雑だ。日本でヒト感染の前例がないとはいえ、用心にこしたことはない。一般の人が養鶏場に頻繁に立ち入ることは少ないだろうが、ウイルスは野鳥から検出されるケースもある。東京都は1月10日、大田区で5日に回収されたオオタカ1羽の死骸を検査したところウイルスの陽性反応が出た。こうした場合は、とにかくむやみに近づかないことだ。