農林水産省は5月21日、今後の防疫対策を検討するため第7回拡大豚コレラ疫学調査チーム検討会を開いた。これまでの疫学調査から検討会は養豚密集地域ではウイルスが付着したネズミやハエが豚舎内にウイルスを運んだ可能性も指摘し、殺鼠剤の散布やネズミの新たな侵入を防ぐ必要もあるとした。
検討会では13例目(3月27日愛知県・瀬戸市で発生)から22例目(4月22日愛知県・瀬戸市発生)について感染経路と今後の対策を検討した。
各発生事例のウイルスの侵入時期や農場への侵入要因などを検討した。検討結果をもとに21例目までの感染時期を整理した(図)。そこで示されたのはウイルスが侵入したと推定される時期と豚コレラの発生時期にずれがあること。たとえば、3月29日に発生した16例目(愛知県田原市)のウイルスの侵入時期は1月中旬から2月上旬と考えられた。
調査ではこの農場では1棟の肥育豚舎のみから感染が確認されており、少量のウイルスが侵入し、この豚舎のなかだけで時間をかけて感染が拡大していったことが考えられるという。
調査チームの津田知幸チーム長(KMバイオロジクス技術顧問)によると豚コレラウイルスは「100個あれば感染する」として、ごく少量のウイルスが「隙間を縫って運ばれている可能性がある」と話した。
野生イノシシからの感染が疑われる発生例もある、今回検討した10例のうち6例ではネズミの生存も確認されている。ネコやカラスが認められた農場も確認されており、小動物、野生動物を通じて農場内にウイルスが侵入した可能性もあるとした。
とくに愛知県田原市の発生事例では、周辺で発生したウイルスが原因となっている可能性が否定できないとした。ごく少量のウイルスがわずかの豚に感染した場合は、そこから感染が拡大して多くの豚で症状が明確になるまで時間がかかるという。
そのため今後の発生予防対策として飼養者が立ち入る頻度が高い分娩舎などでは▽踏み込み消毒や専用長靴の使用、▽立入前のこまめな手洗いを行うととともに「より丁寧な個体ごとの臨床観察が必要」で早期通報と相談を呼びかけた。
また、養豚密集地域では発生農場で消毒、殺処分など一連の防疫措置が実施された際、ウイルスが付着したネズミやハエが散逸し、周辺農場へウイルスを運んだ可能性もあるとした。そのため殺処分の実施前にネズミやハエを駆除するための殺鼠剤散布や粘着シートなどの設置も必要だと指摘した。発生農場の近隣農場ではネズミ等の侵入を防ぐ消石灰の散布の徹底も求めた。
今回発生が続いている豚コレラは症状が明確でなく発見しにくいとされている。中国や欧州でも「症状がマイルド」(津田チーム長)で、また、野生イノシシに感染が広がると発生が長引くというのは世界的な傾向だという。
津田チーム長は「立入検査より、農家の毎日の観察が有効。今回は症状が目立たないという特徴があるが、自分の財産を守るという点から豚コレラを疑って観察してほしい」と話すとともに、農家と行政が一体感を持って対策に取り組む必要性も強調した。
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