AMR臨床リファレンスセンターはこのほど、「海外旅行中の下痢や腹痛の有無、薬の取り扱いについて」の調査結果を明らかにした。同調査は6月、東南アジア、南アジアへの海外旅行経験を有する331人を対象にインターネットで実施したもの。
海外で下痢・腹痛になったことがあるか尋ねたところ、63.4%が「はい」と答えた。特に20代男性は、85%と多くが下痢や腹痛を起こしていることがわかった。
国立国際医療研究センターの国際感染症センター・忽那賢志先生によると、途上国はまな板や包丁が汚染されている場合が多いという。サラダやカットフルーツ、屋台料理などには食中毒を起こす菌が付着している可能性があるだけでなく、ときには薬剤耐性(AMR)菌が体内に入る機会にもなるとのこと。
薬剤耐性(AMR)とは、薬が微生物に対して効かなくなることを指す。抗菌薬(抗生物質)は、細菌などの微生物が増えるのを抑えたり壊したりする薬だが、微生物はさまざまな手段を使って薬から逃げ延びようとする。その結果、薬が微生物に対して効かなくなる「薬剤耐性」を持った菌が生まれてしまう。
抗菌薬が使用されると、その薬が効く菌が減少し、反対にAMRをもった菌が生き残ってしまう。それらの菌が体内で増殖し、人や動物、環境を通じて世間に広がるとのこと。抗菌薬は大切な薬だが、適切に使用することが大切であるという。
海外旅行に薬を持っていくか聞くと、84%が「持っていく」と回答した。忽那先生は、「薬を持参するのは悪くはないが、使用法には注意が必要」と指摘する。特に抗菌薬においては、以前処方されて余った薬を持参し自己判断で中途半端に服用することは、薬剤耐性菌をつくることにつながるため、絶対に避けるべきであるという。
外旅行に抗生物質(抗菌薬)を持参したり、服用したりした機会があるか尋ねると、42.6%が持参または服用していると回答した。特にバックパッカーが多い20代の男性は78.8%が「持参または服用した」と答えている。
忽那先生は、海外旅行でのAMR対策として、「現地でまめに手洗いを行う」「加熱した野菜を食べる」「屋台の食品は加熱されたものでも食べない」「ペットボトルや密閉容器に入った飲料を飲む」「旅行の1カ月前にはワクチン接種を行う」を挙げている。
また、実際に下痢になった場合、軽いものならば抗菌薬を飲まずに整腸剤で様子をみることをすすめている。下痢が重い場合は、現地の薬局で薬を買ったり、自己判断で抗菌薬を服用せず、医療機関にかかるほうがよいとしている。
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