2019/08/01【エボラウイルス】コンゴのエボラ流行、なぜ国際的な危機なのか WHOが緊急事態宣言 /コンゴ
致死性の高いエボラウイルスがコンゴで流行していることについて、世界保健機関(WHO)は、国際的な緊急事態を宣言した。昨年8月以降、史上2番目の規模で流行しているエボラ出血熱により1,600人超が死亡した。ルワンダとの国境に位置し、200万人超の人口を抱えるコンゴの都市、ゴマで感染が確認されたことを受け、7月17日に緊急事態宣言が発表された。
今回はエボラ出血熱について解説するとともに、WHO事務局長が「世界でもっとも危険な地域で発生した世界でもっとも危険な病気」としたこの病気の流行拡大を食い止めるうえで、医療関係者が直面している前代未聞の難題についてもまとめていく。
◆エボラ出血熱とは
エボラウイルスは感染速度が速く、感染者の最大90%が死に至る恐れがある。症状としては、発熱、嘔吐、下痢、筋肉痛などがあるが、体の内外に出血が見られることもある。エボラウイルスへの感染は、感染者の体液や、ウイルスに汚染されたシーツなどに接触することで起こることがもっとも多い。そのため医療従事者は感染のリスクが高い。
エボラ出血熱においては、有効性の認められた治療が確立していない。しかし初期段階で水分補給などの処置を行うことで、生存率は高まる。今回の流行を受け、一部の患者には試験治療が施されているが、その効果に関する研究はまだ不十分だ。
実験段階のエボラワクチンは、初回の大規模投与では効果を発揮しており、これまで16万3,000人超がワクチンを受けた。エボラワクチンの試験は、西アフリカで1万1,300人を超える死者を出した2014~16年の大流行をきっかけに加速した。
◆コンゴでの流行の特異性
医療関係者らは今回の件について、戦争区域という本質を持つ地域では初めてのエボラ大流行だとしている。コンゴ北東部では数十組の反政府組織が活動を展開しており、ここ数年の間に数百人が殺害された。トラウマを抱え、外部の人間や権力に対して懐疑的になっている国民が主導したものだ。
エボラ出血熱はマラリアなどその他の致死性の高い病気と違い、コンゴの同地域では症例が見られなかった病気であるため、なぜエボラにこれほど多くの関心が寄せられ、莫大な資金が投じられなければならないのかと疑問を呈する住民もいる。
このような誤解が広がるなか、予防対策の重要性を伝えることが救急隊員らの大きな課題となってきた。今年の初頭にはWHOの伝染病学者が銃殺され、医療従事者を狙った襲撃事件も起きている。このような事件により、感染者数は急増し、感染者と接触した数千人の足取りを追うというただでさえ骨の折れる作業が、より一層困難なものとなっている。
国際救済委員会のボブ・キッチン緊急事態担当副委員長は17日の宣言を受け、「エボラ出血熱の感染拡大を阻止する上で、コミュニティの信用を得られないことが大きな障害となっている。地元住民は、多数の国際組織が同地域に立ち入っていることに加え、死者数が増え続けていることに当惑と苛立ちを募らせている」と述べている。
◆緊急事態宣言の意義とは
健康面における国際的な緊急事態が宣言されると、国際社会の関心を高め、援助が増えるきっかけとなる。WHOは流行拡大を阻止するためには数千万ドルの支援が必要だとしているが、コンゴの各当局は、経済への影響や、他国がコンゴとの国境を封鎖する可能性を懸念し、緊急事態宣言への反対を呼びかけている。
今回のエボラ出血熱の流行を受け、WHOは4回の専門委員会を開催しているが、一部専門家は数ヶ月前の段階ですでに、国際的な緊急事態とする基準を満たしていると指摘している。国際的な緊急事態を宣言するには、病気の流行がほかの国々へのリスクとなっていること、関係各所が協調して対応する必要があることが認められなければならない。
先月、コンゴと隣接するウガンダにも感染の拡大が確認された後、WHOの専門委員会が開催された。しかしここ数ヶ月の間、保健専門家らが危惧していたのは、同地域の重要拠点であるゴマへの拡大だ。コンゴ東部のWHO事務所で感染症担当長を務めるハルナ・ジンガレ医師は、「ゴマから、世界中のどこへでも飛ぶことができる」と言う。