下痢や血便の症状を引き起こし、死亡することもあるO157などの腸管出血性大腸菌が出現するのは、ウシの腸内で大腸菌が生存するために多くの病原因子を蓄積させるのが起源であることを九州大大学院の小椋義俊准教授(細菌学)らの研究グループが突き止め、米科学誌のオンライン版で23日発表した。
腸管出血性大腸菌はウシにとってはほぼ無害で、加熱が不十分な牛肉などを通じて人間の腸内に入った際に発症する場合があると考えられるという。O157の起源はこれまで十分に解明されておらず、今回の研究成果が安全な食肉生産や、感染予防につながることが期待されるという。
大腸菌は基本的には病原性がなく、人間を含む脊椎動物に常在しているが、一部の菌が病気を引き起こす。研究グループはウシ大腸菌、ヒト大腸菌、腸管出血性大腸菌の計1134株をゲノム解析で比べたところ、ウシと人間では大腸菌の系統が異なることが分かった。ただ、現段階でウシの腸内で腸管出血性大腸菌ができる具体的な仕組みは判明していない。
小椋准教授は「今後はウシ腸内で病原因子が蓄積する仕組みを解明することで、腸管出血性大腸菌の出現を抑えることが可能になるようにしたい」と話している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48870800S9A820C1CR8000/