2020/05/22【新型コロナウイルス:COVID-19】「大規模な感染では集団免疫は生じない」…ワクチンができるまでは検査と隔離を
・スペイン、フランス、アメリカなど、コロナウイルスで大きな被害を受けた国々では、感染の波が押し寄せても、集団免疫の閾値には達しないことが分かってきた。
・これらの国でコロナウイルスの抗体を持っているのは人口の約5%と見られており、ウイルスの拡散を止めるために必要な50から70%には程遠い。
・専門家は、集団免疫獲得のために国民の命を犠牲にする「非常に残酷な計算」に対して警告している。
世界中で新型コロナウイルスの抗体検査が実施されるにつれ、「集団免疫」という名のユートピアはこの地球上には存在しない可能性が高くなってきた。
十分な割合の人が感染して回復し、その病原体に対抗する抗体を持つようになると、その集団は「集団免疫」を獲得したことになる。専門家によるとCOVID-19の場合、人口の70%は感染する必要があるという。
このウイルスは、これまでに30万人以上を死に追いやり、世界の経済を壊滅させた。しかし、最も被害を受けた国でさえ、抗体を持っているのは人口の10%に満たないと言われている。
数万人が犠牲になっても、抗体を持つのは5%以下
スペインとフランスの研究では、住民の5%しかCOVID-19抗体を得ていないことが示された。この2つの国では約3万人の犠牲者が出ている。
スペインの研究結果は「大規模な集団感染や高い死亡率が、効果のある集団免疫を生じさせるわけではない」ことを示していると、ハーバード大学の疫学者であるウィリアム・ハナージ(William Hanage)博士はツイッターで述べた。
アメリカでは約9万人が死亡しているが、集団免疫獲得の兆候は見られない。4月にカリフォルニア州サンタクララ郡で行われた調査では、同郡の住民の2.5%から4.2%が抗体を持っていると推定された。ロサンゼルス郡の研究でも同様の推定を行っており、 「血清有病率」(血液中に抗体を持つ人の割合)は2.8%から5.6%だった。
ニューヨーク州の抗体調査では、同州の住民の13.9%がコロナウイルスに感染していたことがわかった。ニューヨーク市では、血清有病率は21.2%と高かったが、それは検査を受けた人々(症状があると思っていた人々)の間でのことだ。それでも集団免疫に必要な50%から70%には程遠い。
これは、2万8000人以上が死亡したニューヨーク州のような壊滅的な感染の波にまだ直面していないアメリカの他の地域にとってはよいデータではない。
「アメリカでは、血清有病率は5%以下と推定される」と、フロリダ大学の生物統計学者であるナタリー・ディーン(Natalie Dean)博士はツイートした。
「さらに多くの死者を出さないで、(集団免疫の)段階に達する現実的な方法はないと思う」
「人間は動物の群れではない」
世界的大流行が始まって以来、ほとんど通常の生活を維持してきたスウェーデンでさえ、集団免疫には程遠いようだ。
スウェーデンの公衆衛生当局は、ストックホルムの人口の約4分の1がCOVID-19に感染したと推定している。同国では3500人以上が死亡しており、これは確認された症例の12%以上にあたる。
「『あまり規制をしないでいると、途中で何人かの老人を失うかもしれないが、ある日突然、集団免疫を得られるかもしれない』という考え方はとても危険だ」と、世界保健機関(WHO)の緊急事態担当ディレクターであるマイク・ライアンは記者団との電話会見で述べた。
「人間は動物の群れではない」とライアンは付け加えた。
「人間の感染症でこのような用語を使うときは、細心の注意を払う必要がある。なぜなら、それは人間や生命や苦しみを考えない、非常に残忍な計算につながるからだ」
ワクチンが最良の方法
最終的に、地域社会や世界各国はワクチン接種を通じて集団免疫を獲得することになるだろう。しかし、専門家はワクチンなしで今後の2年間を乗り越えることを計画すべきであると述べている。同時にワクチンが広く利用できるようになるまで、専門家は広範囲にわたる検査と接触追跡を通じてウイルスを監視し、感染した人と接触した人を隔離することを推奨している。 感染が再び病院の能力を超える恐れが生まれた場合、政府は事業を再閉鎖し、規制を元に戻す必要があるだろう。
「検査を受けた中で抗体を持っていると確認できた人の割合は非常に低い」とWHOの疫学者であるマリア・ファン・ケルクホフ(Maria Van Kerkhove)は記者会見で述べた。
「今後さらに多くの人がこのウイルスに感染するだろう。我々はこのウイルスとともに長い道のりを歩んでいかなければならない」
https://www.businessinsider.jp/post-213010